身近な人が犯罪を犯してしまったら、あなたはどのような対応をとるだろうか。

 西日本のある都市に住む吉野さゆりさん(仮名、40代後半)は、2021年に人身事故を起こして刑務所で暮らす夫の帰りを待っている。被害者は軽傷だったものの、周囲の人たちの助言を無視して夫は自動車で逃走してしまったのだ。体内に残った覚せい剤が発覚することを恐れての行動だった。

 結果、覚醒剤取締法違反、無免許運転過失致傷、道路交通法違反で実刑判決が下り、刑務所へ入ることとなった。2025年半ばに出所してくる夫を待つ身となった吉野さんが、これまでの道程を打ち明ける。

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パートナーの逮捕を機に“獄中結婚”

「逮捕されるまでは恋人同士だったんですが、いわゆる獄中結婚をしました。

 婚姻関係にあったほうが刑事施設からの連絡や面会がスムースにできるじゃないですか。もしかすると、遠くの刑務所へ移送されるかもしれないですし。あと、精神的なつながりも残しておきたいと思ったんですよね。

 夫は結婚について『出所してからでいい』と言っていました。でも、私が彼とのつながりを感じたくて、結婚を決めたんです。40代なんですけど、新婚なんですよ」

吉野さゆりさん

 吉野さんは現在の夫と2021年に交際を開始し、同じ年に事件が起きた。交際日数は浅い。にもかかわらず、なぜ結婚までして“待ち人”であろうとする人生を選んだのか。

「交際日数が浅いと言っても、そもそも私が夫と知り合ったのは24歳くらいのときだったんです。地元のお祭で出会って。魅力的な男性だなとは思っていたんですが、いかにもな遊び人でしたし、生活力は乏しく、少しだらしなく感じる部分もありました。そんな具合で、当時は『ちょっとだけなら』という気持ちで付き合うようになったんです。そのうちに、彼の子どもを妊娠しました。

 でも、経済力がない彼を頼りなく思って、私のほうから離れました。

 その後に、関東地方にいる男性と遠距離恋愛をして、お腹の子どもを『あなたの子どもです』と偽って、その人と結婚しました。離婚することになりましたが、それまで、元夫は私の娘を実の娘だと信じて育ててくれたと思います」

娘と食事を楽しむ吉野さゆりさん

 ドラマ顔負けの展開に驚いてばかりもいられない。20年以上を経て、現在の夫と運命的な再会を果たすことになる。