「私には性的な価値しかない」と思って性的に逸脱した行動を取るように…
――パートナーと交際する際に「男性が怖い」と感じることは。
橋本 なかったです。性被害や性的虐待を受けると、男性ないし女性恐怖症になるんじゃないか、と思われることがすごく多い。でも、恐怖症になるケースだけじゃないんです。
恐怖症にならない人もいますし、性の尊厳を傷つけられたことで、性的に逸脱した行動を取ってしまうケースもある。それがまだ理解されていないと感じます。
私がメディアで「不特定多数の人と性的な関係を持っていた」と発言したときに、批判されたことがあって。その行動は性的虐待を受けた過去とつながっている、というのを伝えたかったんですけど。
複数の人と性的な関係を持たざるを得なくなってしまう背景がある、というのを想像できない人が多いのかなと。
――橋本さんは「恐怖症になるケース」ではなかったのですね。
橋本 10代の頃は「ビッチ」「尻軽」と言われるような行動を取っていました。
心のどこかで「私には性的な価値しかない」と思っていて、人と関わったり、好かれたりするために、不特定多数の男性と関係を持っていたんです。別に性行為が好きだからそうしていたわけではなくて、自分の存在意義はそれしかないと思っていた。かなり不安定で、いびつな精神状態でした。
そんな自分の精神状態や行動が、性的虐待を受けた反動だと気づいたのは、20歳くらいのときです。
「性的虐待」という言葉を知ってから、フラッシュバックするようになった
――何かきっかけがあった?
橋本 「性的虐待」という言葉を知ってからですね。その言葉に出会って、「おじさんが私にしていた行為は、これだったんだ」と理解したことで、それまで蓋をしていた自分の記憶が脳内で再生されて。
小学5年生で性的虐待を受けてから、10年間見て見ぬふりをしていた心の傷や痛みが一気に押し寄せてきたんです。10年間の出来事を伏線回収するように、私の感情や行動は、性的虐待を受けたこととつながっているんだ、と気づいていきました。
――蓋をしていた過去の出来事と向き合うことに。
橋本 過去と向き合えるようになったのは良かったけど、一生記憶に蓋をしたままでも良かったのかな、と思ったりします。
実は、それ以降フラッシュバックするようになってしまって。20歳を過ぎてから解離性障害やパニック障害も発症してしまうんです。