新興宗教家庭で育った宗教2世のまりてんさん。入信を拒んだ彼女は家庭での居場所を失い、孤独を感じながら成長していく。大学生になると、不特定多数の男性と性的な関係を持ち、大学4年の冬から風俗店で働き始める。
彼女は、どのような孤独感を抱えながら学生生活を送っていたのか。なぜ風俗店で働くようになったのか。ここでは、まりてんさんの著書『聖と性 私のほんとうの話』(講談社)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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大学卒業を控えた12月に、デリヘル店で働き始める
大学4年生の春、東京の広告制作会社に就職が決まりました。
就職活動が終わった後も、相も変わらず私は逆ナンを続けていました。そんなある日、秋口くらいに、夜遊びの「悪友」だった女の子が「ねえ、聞いて。内緒なんだけど……私デリヘルはじめたんだ」と伝えてきました。
そのころの私にとって、風俗業界はまったく知らない世界だったので、最初は「え? そんなの絶対危ないよ」と反対していました。ただ、そうは言いながらも内心では興味津々で、その悪友の話を聞くうちに「おもしろいね、なんかおもしろそう」と、私もその世界が気になりだしたのです。
それで12月から、その子と同じデリヘル店で働きだしました。すでに就職は決まっていたし、3ヵ月後には上京することが決まっていたので、学生生活で最後のちょっとした裏社会見学のノリでした。明らかな好奇心です。
入店したお店は本当に規模の小さいお店だった
説明不要かもしれませんが、デリヘルというのは「デリバリー・ヘルス」の略。お客様のご自宅やホテルに女性を派遣して性的なサービスを行う風俗業です。性的サービスといっても、本番行為(セックス)はNGです。
お店をかまえてお客様に来店してもらいサービスをする店舗型風俗は、風営法によって深夜24時までの営業と決められていますが、デリヘルは24時間営業可能で、サービスをする個室を用意する必要もないため、私がはじめた2010年代には地方都市にも数十店舗あるくらい風俗サービスの主流になっていました。
私が入店したお店は本当に規模の小さいお店で、男性スタッフも二人のみ。その二人が送迎ドライバーをしながら、電話が鳴るたびに車を路肩に停め、お客様からの予約を取るようなお店でした。