新興宗教家庭で育った宗教2世の現役風俗嬢・まりてんさん。入信を拒んだ彼女は家庭での居場所を失い、孤独を感じながら成長していく。大学生になると、不特定多数の男性と性的な関係を持ち、大学4年の冬から風俗店で働き始める。
彼女は、どのような孤独感を抱えながら学生生活を送っていたのか。なぜ風俗店で働くようになったのか。ここでは、まりてんさんの著書『聖と性 私のほんとうの話』(講談社)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
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風俗の仕事が自分に合っていた
私はその時期、大学卒業のための卒業制作にとりかかっていましたが、デリヘルのお仕事が楽しすぎて、卒業制作が間に合わなくなりそうになりました。なんとかギリギリで卒業できましたが、それくらい、デリヘル嬢というお仕事が私に合っていたのだと思います。
私が大学時代に精力的に取り組んでいた「逆ナンパ」ですが、いくら成功率が高くなっても、誰にも褒められないし、成績にあらわれるわけでもありません。自分では、「成功率、こんなに高くてすごくない?」なんて鼻は高かったんですが、あくまで自己満足。
それがデリヘル嬢になると、きちんとしたシステムの中でお仕事として成果が出て、評価もされます。
この驚きをたとえるのであれば、友達にとてもおいしいクッキーを焼いてあげていて、友達は「おいしい、おいしい」って喜んでくれていたけど、お店に出品したら売れるんじゃない?って言われて出してみたら「すごく売れたじゃん、嬉しい!」みたいな感じです。
月の給料は50万円ほどになっていった
浜松でしたし、お店の料金も高くはなかったので、そこですごく稼いだというわけではないのですが、月のお給料は50万円ほどになりました。そのお店としてはすごいことだったようです。
なにより、ホテルというあらかじめ決まった場所で、60分や120分などとコース時間が決まっているサービスを行う風俗は、路上の逆ナンよりも安全で、時間が区切られている分、楽に感じるようになりました。
逆ナンで男の人の家に行くと、やはり束縛されたり、拘束時間が長くなったりすることもありましたから、数多くの「答え合わせ」をしたかった私にとっては非効率的でした。
趣味の延長のように繰り返していた逆ナンをして相手を深掘りしていくという行為が、仕事上の「接客」になるという意味で、自分が「遊び人」から健康な人、健全な人になれた気もしていました。