1949年に設立された老舗バレエ団「谷桃子バレエ団」は、団員たちの苦しい金銭事情まで赤裸々に明かすYouTubeチャンネルがバズり、いまや公演のチケットが完売する人気となっている。ただ、公式チャンネルの“ぶっちゃけ路線”への方針転換にあたっては、内部でも葛藤があったようだ。新刊『崖っぷちの老舗バレエ団に密着取材したらヤバかった』(渡邊永人/新潮社)でも注目を集める、バレエ団の芸術監督を務める高部尚子さんに舞台裏を聞いた。(全2回の1回目/後編を読む)
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ほとんどのバレリーナが「バイト生活」
――谷桃子バレエ団のYouTube動画は、どれも衝撃的な内容でした。谷桃子バレエ団の団員に限らず、プロのバレリーナでもステージ一本で食べていける方はほんの一握りで、ほとんどがバイト生活なんですね……。
高部尚子(以下、高部) ヨーロッパでは、バレエ鑑賞は当たり前の娯楽として存在していて、そのぶんプロのダンサーもバレエ団から十分なお給料をいただいています。一方、日本で安定したお給料を団員の方々に支払えるバレエ団となると、トップの3組くらいではないでしょうか。
――厳しい現状ですね……。やっぱり人気のバイトとなると、バレエ教室の講師ですか?
高部 そうですね。せっかくならバレエに関わる仕事ができるのが一番ですし、誰かに教えることは自分の学びにもつながりますから。とはいえ、マクドナルドの店員さんなど、バレエと全く関係のないバイトをしている若い方もたくさんいます。スケジュールの調整が効いて、ケガをする危険性が低くて……と、いろいろ注意しながらバイト先を選んでいるようです。
――「バレエはお金がかかる」とよく聞きますが、具体的に何にお金がかかるのでしょうか?
高部 女性ですとトゥシューズですね。値段が1万円くらいしますが、完全に消耗品なので、1か月に何度も買い替えないといけません。
――バレエの世界は、たとえプロのダンサーになったとしても実家が裕福じゃないと活動を続けにくい現状があるのでしょうか?