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「明日の犠牲者はこの方です。おやすみなさい」深夜、テレビ放送終了後に流れる謎の映像

 1980~90年代まで、深夜時間帯にテレビが放送休止していたころは、その時間帯に砂嵐やカラーバーではなく奇妙なものが映るという怪談が広まっており、日本でも1968年にはすでに語られていた5。テレビが映すものというよりも、テレビそれ自体の異常──「テレビを通して異界を垣間見られるかもしれないのと同じように、異界のほうも私たちのリビングルームをのぞき込んでいる6」という感覚があったのである。

 こうした超自然的メディアは、メディア論では「想像上のメディア」と呼ばれており、19世紀末から20世紀初頭にかけてすでに「科学的メディア(あるいは技術メディア)に、エイリアンや死体やその他の不気味なコミュニケーション形式が取り憑いているのではないか」というイメージがあったことが論じられている7。キャンドル・コーヴとNNN臨時放送はそうしたメディア怪談の系譜に連なるものではあるが、そこにロストメディアという曖昧さも付け加えているところが21世紀のネット怪談やネットホラーの展開を示しているように思われる。

※写真はイメージ ©AFLO

ゴミ処理場を背景に「明日の犠牲者リスト」が流れる

 NNN臨時放送が現在まで響くインパクトを持つようになったのは、二度にわたって再現映像──逆行的オステンション──が制作されたことが大きな要因だろう。1つ目はFLASHアニメで、個人サイトに2002年10月ごろ公開された8。内容は単純で、カラーバーのあと、ゴミ埋立場の画像をバックに二十数名の人名が流れていくというものである(図32)。オリジナルはすぐに削除されたが、転載されたものが別のウェブサイトやニコニコ動画で公開され、今でも見ることができる。

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 5年後の2007年8月2日には、新しく作られたバージョンがYouTubeに投稿され、NNN臨時放送の人気は不動のものとなった(2024年9月現在の再生数は約262万回9)。YouTube版は、より忠実に「ゴミ処理場」を背景にして、やはり人名を表示していくものであるが(図33)、幾度となく急に驚かせるジャンプスケア的な画像や音声が挿入され、ホラー映像としての質を高めている。

 なかでも4分11秒あたりで画面いっぱいに表示される白塗り顔の加工画像は、1年後にジェフ・ザ・キラーに流用されることになるものだった(前章参照)。またYouTube版はアナログで録画されたコンテンツをデジタルな媒体に転載するという再媒介的形式をとっており、その意味で、日本では最初期のアナログホラーだということもできる。