YouTubeチャンネル「フェイクドキュメンタリーQ」や、2024年末に話題を呼んだ『飯沼一家に謝罪します』、さらに映画『変な家』といった、現代のホラーの怖さはどこから生まれるのか。ネット怪談を民俗学の視点から紐解いた書籍『ネット怪談の民俗学』から一部抜粋し、現代ホラーの特徴や、その先駆けとも言える「これって何?」について見ていく。(全2回の1回目/後編を読む)

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ネットホラーのトレンドは「実写」「アナログ」「素人」

 現代のネットホラーに関わる3つの概念を、まずは説明しておこう。ファウンドフッテージ、アナログホラー、モキュメンタリーである。いずれも映像創作ジャンルである。

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「ファウンドフッテージ」(found footage)は、直訳すると「発見された映像の断片」という意味で、何らかの理由で行方不明だった(あるいは存在が知られていなかった)映像が見つかり、再生してみると、撮影者たちに恐ろしいことが起きていたことが分かる──という設定のものが多い。フィクション作品に形式的な現実感を持たせるための技法として、21世紀に入ると多用されるようになった。なかでも、1999年に公開された映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に連なるホラー映像作品のジャンルが中心を占めている。The Backrooms(Found Footage)も、タイトルどおり、このジャンルの作品である。

※写真はイメージ ©tamarinイメージマート

 The Backrooms (Found Footage)がそうであるように、ファウンドフッテージは素人が撮影した古い映像という設定が多い。2020年代現在の古い映像といえば、VHSや8mmなどの素人も扱えるアナログテープである。日本でもYouTube チャンネル「フェイクドキュメンタリー『Q』」(2021年8月22日~)が、アナログ風の映像を多用して、ファウンドフッテージ型ホラーを立て続けに発表している1

「アナログホラー」(analog horror)は、基本的にはデジタル映像が一般的になる前の時代(おおよそ1990年代半ばまで)に記録されたという設定のアナログ画質の映像のなかに、どこか不穏だったり、異常なことが起きていることを示唆する情報が入っていたりするデジタル作品を指す。一つ一つの動画は短いことが多く、断片的だったりノイズが強かったりして、全体像が見えず、視聴者側の考察に任されるのが特徴的である。先述のThe Backrooms(Found Footage)は、コロナ禍におけるアナログホラーの代表作でもある。