さらに単純な問題として、別学校と共学校では設備も異なる。たとえば男子校には女子トイレが極端に少なく、女子校では男子トイレがほぼないところもある。子どもを男子校や女子校に通わせた経験のある保護者なら、保護者会などでトイレが見つからなくて困った経験もあるだろう。

 ほかにも、部活動の部室などは男女で分ける必要があり、共学化に合わせて新校舎を建設するところもある。共学化にはこうした設備投資費が必要なのだ。

 それでも共学化に踏み切るのは、学校にとって生徒募集こそが生命線だからである。「教育は金儲けではない」という言葉はしばしば現場の先生達から聞かれるが、学校経営にお金がかかることも確かで、生徒募集に失敗して定員割れがおこれば経営は苦しくなる。最悪の場合は閉校に追い込まれることもある。

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写真はイメージです ©AFLO

「有名校長が辞めた途端にそれまでの学校改革が白紙に戻された」ケースも

 学校経営が企業と違うのは、収入が年に1度の受験期間に決まってしまうことだ。企業ならば上半期の不振を下半期で取り返すこともできるが、春の入学で確定した生徒数を年度の途中で大幅に上乗せすることはほぼできない。

 寄付や補助金もあるとはいえ、当然それだけでは成り立たない。児童数が減少へと転じる中、経営不振の学校は戦略的に生徒獲得を考える必要があるのだ。

 大きな改革に合わせて、各校では、名のある人を校長に招くケースもある。しかしその人の考え方に共感したとしても、学校全体にその先生のカラーが浸透するには時間がかかる。

 さらには、期待していた校長が数年で辞めてしまうことも少なくない。校長の教育方針や考え方が気に入って入学を決めたという家庭にとっては、梯子を外された気分になるだろう。過去の取材では「有名校長が辞めた途端にそれまでの学校改革が白紙に戻された」と嘆く保護者も複数人に出会った。

 つまり、志望校や進路を選ぶうえで、大幅な改革をした直後の学校を選ぶことはそれなりのリスクがあるということだ。改革された教育方針が本当に根付くのかを確認するのには改革後3年くらいはかかるが、共学化などは発表のタイミングが最も話題になり、志願者数も増えることになる。

 改革初年度の学校への入学を検討している保護者は、その学校が本当に信頼できるのかを見極める必要があるだろう。