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「この子は外せない」と思わせる歌声
《萌音さんは普通の中学生で特段目立つ感じでもなかったけれど、歌を聴いた瞬間、驚きました。審査される場なのに、今ここで歌えることが嬉しいという喜びにあふれていて、こちらまで幸せになる。声がスッと心に届いてきました。まだオーディションの途中でしたが、『この子は外せない』と。/彼女なら、少女が一途な思いで舞妓になって輝いていく成長の姿を見せられると思いました》(『週刊新潮』2022年6月10・17日号)
こうして800人のなかから見事主演に選ばれる。とはいえ、この時点で彼女の演技力は未知数で、周防もさすがに芝居には苦労するだろうと思っていたようだ。しかし、いざ撮影に入ると、彼女はセリフを完璧に入れており、一発OKしたテイクのほうが多かったぐらいだという。それも、ただ言われるままに動くのではなく自分で考えて芝居ができるし、ベテラン俳優との芝居でもきちんと反応して演じられるとあって、監督が苦労することはほとんどなかったとか。上白石にとっても『舞妓はレディ』は最初の転機となった作品であり、《周防正行監督に見つけていただいたからこそ、今がある気がしています》とのちに語っている(『女性自身』2019年9月17日号)。
オーディションで監督の心を射止めるということは、上白石が広く世に知られるきっかけとなったアニメ映画『君の名は。』(2016年)でも繰り返された。(後編に続く)
