「手を入れないとまずい」
7年間視聴率三冠を守って来た。その前が日テレ、さらに日テレの前の約10年はうちがトップでした。私はこの7年間、ちょっと社内が疲れてきているかな、と感じてきました。視聴率がいいと、やはり保守的になり、何かを変えるにしてもものすごく臆病になる。そして案の定、2011年に日テレに抜かれ、12年になれば少し回復するかなと思ったら、今度はテレ朝との三つ巴になった。ここらで手を入れないとまずい、と思っています。
そこで今度の(6月の)株主総会で、メディアコングロマリットと放送事業を分けた。グループ全体を束ねるメディア・ホールディングスと現業の事業会社であるフジテレビを分離したのです。これからはますますテレビだけじゃ食っていけない時代になるので、時代の変化に対応しながら、全体の経営の多角化をやっていこう。ただし、メディア・ホールディングスの中核であるフジテレビは、グループの半分以上の利益をあげている。そこに金属疲労が見えてきた。だから、もう一度テレビ会社の原点に戻ろうとしています。組織を変えてどうこうじゃなく、空気を変えてみる。そのために分けてみたという順序かもしれません。亀山君(千広社長)がテレビの最高責任者、太田君(英昭社長)がメディア・ホールディングスで全体像を考える形に変え、今、スタートしたところです」
01年7月に日枝久が社長から会長に就任して以来、フジテレビの社長は村上光一、豊田皓、そして今度の亀山で3人目だ。なのに、会長だけは代わっていない。
――取締役人事を巡っては、長すぎる日枝体制が組織の硬直化を招いているという指摘がある。
「放送業界からすれば、そういうご批判もあるだろうとは思います。しかし、社長と会長の業務はまったく異なる。社長は毎日、目の前の視聴率で悩み、ストレスを抱えてたまらなく疲れるわけです。だから若くないとやれない。一方、会長である私はテレビの編成や番組づくりに一切口を出しません。グループ全体の方向性を決め、それから投資やM&A(企業買収)といった資本関係や外部との関係の仕事をする。従って番組の企画やタレントの起用などは、すべて現場に任せ、番組制作のプロダクションの担当者に会うことなど、この十何年ありません。ジャニーズ事務所社長のジャニー(喜多川)さんや(姉の)メリー(喜多川)さんとも会っていない。去年かおととし、ジャニーさんが演出した帝劇の芝居で会ったくらい。渡辺プロの渡邊美佐さんとは昔話をするだけで仕事の話なんてしない。社長は業務執行の最高責任者ですから、一切任せています」
※本記事の全文(約1万字)は「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます(森功「フジテレビはなぜダメになったのか」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・いつまで会長を続けるのか
・ライブドア事件の背景「あれは禁じ手です」
・「『あの野郎、長くいやがって』という声も聞こえてきます」
・「安倍さんとは長い付き合いなんです」
・フジテレビのDNAとは「時代の変化を見て新たな挑戦をしろ」
また、2017年の日枝氏のインタビュー「フジ日枝久独占告白 社長交代劇の内幕」(森功)も、「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。