中居正広氏の女性トラブルをきっかけに、窮地に立たされたフジテレビ。長年、同局に君臨するフジサンケイグループ代表で、フジテレビ取締役相談役の日枝久氏が表舞台に姿を見せないことにも失望が広がっている。日枝氏とはどんな人物なのか。「文藝春秋」(2013年10月号)に掲載したジャーナリスト・森功氏による日枝氏(当時同社会長)のインタビューを一部紹介する。

(文中一部敬称略)

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いつまで会長を続けるのか

――今度の役員人事では、豊田前社長が会長ではなく、社長と会長の中間の副会長ポストに棚上げされた、という声もある。この際、会長ポストを豊田氏に譲る選択肢もあったのでは?

「社長をやったら次は会長という順序、社長の延長が会長という日本企業の考え方が良いのかどうか……。副社長が会長をやってもいいし、社長が顧問になってもいい。その時に合った人が会長として、グループ全体の基盤整備のための使命を果たせばいいのです。事業会社社長の亀山君も持ち株会社の太田君も新任だし、組織も持ち株会社と事業会社の分離に慣れていない。これから相当な調整が必要です。豊田君は両社の経験者ですから、副会長としてそういう調整役をやってもらいます。いわば会長補佐として。

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フジテレビ会長の日枝久氏(肩書きは当時) ©文藝春秋

 人事の選択肢はたくさんあります。うちだけの特殊性かもしれないけれど、会長は長く務めざるを得なかった。20年位前から社内はいろいろありました。私もそこ(オーナー家の鹿内宏明のグループ議長解任)に噛んでいた一人だった。また、ひょっとするとフジテレビおよびフジサンケイグループはライブドアの堀江(貴文)さんや村上ファンドの村上(世彰)さんに持っていかれたかもしれない。社内は混乱し、そこから組織としての基礎をつくり、道筋をちゃんと付けないと、僕は無責任になる。辞めていった人や遠いところで批判する人がいるかもしれませんが、いいところまで来ているなというのが今の実感なんです」

フジテレビは堀江貴文氏(左)や村上世彰氏の買収攻勢にさらされた過去がある ©文藝春秋 

「これが失敗すれば、完全に私の責任です」

――まだまだグループとしての基盤は安定していない。だからみずからがトップとして組織づくりをしていく必要があるということ?

「まだまだ、とは言わない。まだ、です。もうちょっとのところまで道筋が来ていると思います。やはり僕がこういう立場(会長)にいながら、豊田君が補佐していくことが、うちにとって適切な人事配置だ、と判断しました。長過ぎるという批判と会社の維持とのどっちを大事にするか、私は会社を維持するほうを取りました。だからこれが失敗すれば、完全に私の責任です。経営判断基準は単に視聴率だけではなく、総合的な売上げと利益です。6300億円ある連結売上げが、来年は6400億円になる予定です。他社に比べ2000億円以上上回ると思います」

※本記事の全文(約1万字)は「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます(森功「フジテレビはなぜダメになったのか」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。

・ライブドア事件の背景「あれは禁じ手です」
・「『あの野郎、長くいやがって』という声も聞こえてきます」
・「安倍さんとは長い付き合いなんです」
・フジテレビのDNAとは「時代の変化を見て新たな挑戦をしろ

 また、2017年の日枝氏のインタビュー「フジ日枝久独占告白 社長交代劇の内幕」(森功)も、「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。