「気づいたらボケている」共演俳優がみた“素顔”
昨年12月公開の映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』で演じた自身初の悪役・よどみは、人々をそそのかしては悪意を吐き出させるというキャラクターで、ネガティブな感情も表現に活かしたい上白石にはまさに打ってつけであった。考えてみれば、彼女がこれまで演じてきたのもけっしてポジティブな役ばかりではない。前出の『カムカムエヴリバディ』のヒロイン・安子も、勉強熱心なところは現実の彼女に近いとはいえ、結果的に自分の子供よりも恋人をとってアメリカに渡ってしまったわけで、終戦直後の日本の女性としてはかなり破天荒である。
このドラマで安子の夫を演じた松村北斗は昨年、映画『夜明けのすべて』で再び上白石と共演した。その公開時、二人で応えたインタビューでお互いをどんな人だと分析しているかとの質問に対し、松村は彼女のことを《気づいたらボケてる人》、《ためになる話をしていると思ったら、ひょうきんなオチがあったりして。コーヒー1杯を飲み終わるのにちょうどいい尺の小噺ができる人ですね》と評した(『anan』2024年2月7日号)。具体的にどんな話をするのか気になるところだが、素顔の彼女は、優等生キャラのなかにも天然ぶりを垣間見せているようだ。
「木があれば登りそうな感じ」「あっ、登ってました!」
先に引用した『君の名は。』公開時の対談でも、新海誠監督が、劇中でのヒロイン・三葉の「来世は東京のイケメン男子にしてくださーーい!!」という叫びを本当に言いそうだと思えたのは、オーディションしたなかでも上白石さんが最初で最後だったと明かした上、《なんというか……うん、この子は叫ぶかも、と(笑)。木があれば登りそうな感じ、というか》と言うと、上白石はすかさず《あっ、登ってました!》、《ど田舎で育ったので、木登り大好きでした(笑)》と無邪気に返してみせた(『ダ・ヴィンチ』前掲号)。こういうところはいかにも天然っぽい。
『君の名は。』から10年近くが経ったが、上白石はいまでも唐突に木に登ってしまいかねない危うさをどこかに隠し持っているのではないか。偶然にも、『カムカムエヴリバディ』のメインビジュアルでは、彼女が同じくヒロインを務める深津絵里と川栄李奈とともに木に登って写っていた。作品のなかでも、危うい演技でハラハラさせてくれる彼女をときには見てみたいものである。
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