「以前は産経新聞を購読していたのですが、今では新聞はもちろん、テレビも一切見ない。その代わりユーチューブとXで偏りなく情報を集め、考えが凝り固まらないようにしています」
これは昨年11月におこなわれた兵庫県知事選での「斎藤元彦氏を支持する50代女性」の言葉だ。日刊ゲンダイが選挙戦ルポで紹介していた。
女性の言葉をあなたはどう思うだろうか? ツッコミどころが多い、いやその通りだ、と様々な感想があるかもしれない。しかし、何がどうなっているのか知りたいという欲求自体は多くの人に共通しているはずだ。誰だって「真実」を知りたいからだ。
「立花さんのおかげで真実を知った」
斎藤氏支持の女性はこうも言っていた。「立花さんのおかげで真実を知り全てがつながりました」。立花氏とはN国党党首の立花孝志氏のことだ。兵庫県知事選に立候補していながら「自分には票を入れないで」と、斎藤氏を応援する旨の街頭演説をして回っていた。
斎藤氏は知事を務めていたが失職した。知事時代にパワハラなどの告発文書を公益通報として扱わず、作成した元県幹部を懲戒処分としたことが発端で、県議会は不信任決議を全会一致で可決した。告発者は昨年7月に死亡した(自死とみられている)。
この過程は報道され続けたが選挙期間になるとテレビや新聞は報道しなくなった。何がどうなっている? 知りたい。それなら自分で情報を取りに行く。その結果として50代女性は「立花さんのおかげで真実を知り全てがつながりました」となったのである。
読売新聞が立花氏を名指しして...
選挙後になって新聞は『選挙と立花氏 言動を看過できない』(朝日新聞社説11月23日)と指摘するようになった。読売新聞も立花氏の名を挙げたうえで、
《斎藤氏を擁護するため、亡くなった告発者の名誉を傷つけるような発信が相次ぎ、斎藤氏支持の論調ができた。》
《その種の情報を発信したことも、斎藤氏の熱烈な支持者を生んだようだ。》と書いた(11月19日)。
現在、立花氏の主張に賛同した人の中には苦い思いをひそかに抱いている人もいるかもしれない。そうした経験をすることで人は学ぶこともある。
ただ、兵庫県知事選は「そうした経験」だけでは済まされなくなっている。人が亡くなっているからだ。