感じた価値をお金で示さなきゃいけない気持ち

――なぜそんなにたくさんチェキを買うんでしょう。

出窓 正直に言えば、何十枚も買う必要は全然ないんですよね。私はその子の歌に救われていたから、ライブに行って曲を聴ければ、それだけで帰ってもよかったんです。私は会話も苦手なので10分とか一緒にいても逆に困ってしまったり。

――それでも買ってしまう?

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出窓 「その子の歌を聞き続けるためにはお金を落とさなきゃいけない」と感じてたんだと思います。純粋に「好きだから行く」で楽しめるのが理想なんでしょうけど、私は「あなたにこれだけの価値を感じてます」っていうのを、お金で示さなきゃいけない気持ちがどこかにあった気がします。それに、心苦しい気持ちもありましたし。

 

「若い女の子たちの何かを搾り取っている」という感覚

――どういうことでしょう。

出窓 地下アイドルの女の子たちはみんな若くて、ファンはかなり年上の人が多いです。その環境の中で「与えてもらっている」というよりも、「彼女たちの何かを搾り取っている」感覚がずっとあったんです。

――ファンの出窓さんが、アイドルから何かを搾り取っている。

 

出窓 そうです。どうしても地下アイドルは、コスプレをしたチェキを売ったり、配信を夜中までやったり、ライブ以外の活動もあります。それを求めたり対価を支払ったりするのが、「あなたの需要はこれだよ」と言っている気がして、アイドルを消費している罪悪感が消えませんでした。私が年下の幼いアイドルを推せなくて、年上ばかり好きになったのも自分なりの「幼い女の子を消費しちゃいけない」という線引きだったんだと思います。

――出窓さんにとって“推し”とは、どのような存在だったんですか。

出窓 私はかなり思いつめた重たいタイプの地下アイドルファンだったと思います。自分の人生があって、そこにプラスアルファを与えてくれる娯楽としてじゃなくて、自分の人生のマイナスを埋めてくれる存在として地下アイドルを推していたような気がします。あの頃はライブに行ってる時だけが「生きてる」と感じられる時間でした。

次の記事に続く 「推す側」から「推される側」に転身した元地下アイドル女性(24)が痛感した、両者が払う“大きすぎる対価”「オタクは4600円、アイドルは自分の人生を…」

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