終戦直後の漁港が生んだ「魚じゃない方のグルメ」

 ともあれ、そうした港町だから、やはり目立つのは魚を食べさせる飲食店である。

 いくら流通技術が発達したとはいえ、東京のスーパーで買った刺身と勝浦のような港町で食べる刺身定食とでは、まったく味が違うような気がしてしまう。

 港町という舞台設定がそうさせている部分もあるのだろうが、やはりこうした町ではうまい魚を食いたくなるものだ。

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 が、この勝浦という町にはもうひとつの名物がある。いわずと知れた、勝浦タンタンメン。

 漁師たちが冷えた体を手っ取り早く温めるために、ラー油をふんだんに使った個性派ラーメン。なんでも1950年代から提供されていたというから、そんじょそこらの町おこしB級グルメと比べたら年季が違う。きっと、国際武道大に通う体育会系大学生たちにとっても、パンチの効いた勝浦タンタンメンは愛されているに違いない。

 

 このように、勝浦の町は小さいながらも食べるものには事欠かず。加えて太平洋を望む絶景に海水浴場。少し足を伸ばせば守谷海水浴場もあるし、海中公園もある。

 何より、夏は冷涼冬は温暖。四季折々などと言うけれど、過酷極まる夏の暑さばかりが際立つ昨今。勝浦のような町の存在は、実にありがたい。暑さ寒さに疲れたら、勝浦に行くべきなのだ。

 だから、次の機会には、三日月シーパークホテルにでも泊まって、仕事を忘れてゆっくりしたいものである。

写真=鼠入昌史

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