2024年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプが圧勝し復活を遂げた。
遡れば00年、トランプが第3党だった改革党からの出馬を検討すると言い出した際には、世間では物笑いの種として扱われた。しかし、その後の16年には共和党の候補者として大統領選に出馬し、大勢の予想を覆して大統領となった。
その間に世間のトランプ像に一体どんな変化があったのか。ここでは22年に刊行され、トランプ復活を機に新書化された、ジャーナリスト・横田増生さんの『ルポ 「トランプ信者」潜入一年』(小学館)から一部を抜粋。
現在公開中の映画タイトルにもなった、日本人が知らない「トランプのリアリティ番組」とは――。(全4回の3回目/続きを読む)
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リアリティ番組出演
トランプが改革党からの出馬を諦めたころ、あるテレビディレクターが、トランプに目を留めていた。リアリティ番組『サバイバー』で数百万人の視聴者を獲得したディレクターが、都会を舞台にしたリアリティ番組を企画していた。
アリが蜜に集まるように、若者が群れ集い、都会で鎬を削るような番組が作れないものか、と考えていた。
番組を牽引するような好感度が高い人物で、精神的にもタフで、視聴者の興味を惹きつけることができる人物として、トランプに白羽の矢を立てた。番組を放送するのは3大ネットワークの1つであるNBCだ。
『見習い生(アプレンティス)』では、16人の若者を2チームに分けて競い合わせる。敗北したチームからは、毎週1人か2人が、トランプから「お前はクビだ!(Youʼre red!)」と告げられ、番組から去って行く。最終的な勝者が手にするのは、トランプのもとで見習いとして1年間働く権利である。トランプの決め台詞となる「お前はクビだ!」は、トランプのアドリブから生まれた。
番組は華やかで陽気で、ウォール街に象徴されるアメリカの実力主義を手本にしている。キャッチーな主題歌から始まる。『アプレンティス』は典型的なリアリティ番組であり、ゲーム的な要素とドキュメンタリーの要素、それにメロドラマとコメディーをうまく混ぜ合わせた仕上がりとなっていた。
初回が放送されたのは04年のこと。
番組はリムジンに乗って移動中のトランプの独白から始まる。