2024年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプが圧勝し復活を遂げた。その頃、兵庫県知事選で斎藤元彦知事の支持者たちを取材していたジャーナリストの横田増生さんは、「トランプ信者」と「斎藤応援団」が“瓜二つ”であることに気づいたという。

 ここでは22年に刊行され、トランプ復活を機に新書化された『ルポ 「トランプ信者」潜入一年』(小学館)から一部を抜粋。20年の大統領選挙で「トランプ信者」たちを取材した横田さんだから見えた「斎藤現象」の本質とは――。(全4回の1回目/続きを読む

斉藤元彦知事 著者撮影

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大統領選から兵庫県知事選挙へ

 兵庫県政の混乱の発端は24年3月にさかのぼる。

 元県民局長が、知事である斎藤元彦のパワハラやおねだりなど7つの疑惑を告発する内部文書を報道機関等に送付した。以来、兵庫県政は迷走に迷走を重ねた。

 最初で最大の蹉跌(さてつ)は、斎藤元彦が公益通報者保護制度に違反する可能性が極めて高い告発者探しを行ったこと。さらに、記者会見で告発文書の内容は「噓八百」であり、書いた当事者は「公務員失格」などの強い言葉で非難した。その後、元県民局長が「一死をもって抗議する」というメッセージを残し、自殺とみられる死を遂げた。

 それを受け、兵庫県議会は調査特別委員会(百条委)を立ち上げた。だが、そこで、道義的責任を感じているかと問われると、斎藤元彦は、

「道義的責任が何か分からない」

 と言い放った。

 そのあまりに傲岸不遜(ごうがんふそん)な発言によって不信感を募らせた県議会は、全会一致で不信任案を可決した。それにより斎藤元彦は失職を選ぶことを余儀なくされた。その直後に開かれた兵庫県知事選挙に、斎藤元彦が再選をかけて立候補していたのだ。

 事前の情勢調査では、前尼崎市長で知事選に立候補を表明していた稲村和美が当選するだろう、とみられていた。

 支持母体であった自民党も日本維新の会も離れていったため、当初は誰も斎藤元彦が当選するとは思わなかった。その再起をかけた出直し選挙に私は密着取材していた。

 孤立無援の斎藤元彦が選挙戦で勝てる可能性が残っているとしたら、SNSを使った空中戦しかないだろうな、と思っていた私は、告示日前に事務所を訪れ斎藤に話を聞いた。