斎藤元彦インタビュー
私の最大の関心事は、斎藤のネット戦略についてだった。私はこう訊いた。
──今回の選挙戦では、東京都知事選で善戦した石丸伸二のようなSNSを駆使した戦いを目指すのか。
「もちろん、X(旧ツイッター)やインスタグラム、ユーチューブも使っていきます。確かに、石丸さんの選挙戦はすごいと思いますが、私はSNSよりも、街頭演説で1人でも多くの県民に直接訴えていきたい」
──ネットには、クラウドソーシング企業のクラウドワークスが、斎藤の動画の作成を1本当たり1500円で募集しているという広告が残っていることを知っているのか。
「私がそういう募集にかかわったことは一切ありません。クラウドなんとか、という企業名さえも知りません。もちろん、私がお金を支払ったということもない。正直言って、何のことなのか、見当もつきません」(斎藤)
この時点で、斎藤は明確なネット戦略を持ち合わせていなかった。それならこの選挙は、戦う前から、斎藤の敗北が確定しているように思えた。
しかし、トランプの圧勝を読み切れなかったように、結果的に私は、斎藤の再選も予測できなかったことになる。
県知事選の初日、斎藤の出陣式の直後に、斎藤を支持するという50代の会社経営者の男性の話を聞くと、わずかながら斎藤が勝利する道筋が見えてきた。
神戸市在住の内山淑登(51)はこう話した。
「最初のころはテレビが報道する、パワハラやおねだりを鵜呑みにして、斎藤って最悪な奴やな、と思っていました。けれど、全国ネットのテレビまでが斎藤さんを叩くようになって、集団いじめのようになってきた。テレビがここまで叩くのはおかしいな、と思って調べだしたんです」
百条委で斎藤を責め立てた県議たちのXの投稿を追うと、「えげつない」ほど斎藤を攻撃していることを知り、その反発心から斎藤を応援する気持ちが芽生えてきた。
内山の主な情報源はXやユーチューブといったSNSであり、新聞は購読しておらず、「テレビは1ミリたりとも信用していない」と語った。
喫茶店で1時間ほど話を聞きながら、目の前の内山と二重写しとなったのは、4年前にトランプの落選が確定した後でも、その当選を信じて疑わないと言う50代の白人男性だった。