2020年、ドナルド・トランプは再選をかけてアメリカ大統領選挙に挑み、そして敗北した。これまでアマゾンやユニクロの潜入取材をしてきたジャーナリストの横田増生さんは、その時アメリカにいた。トランプ陣営にボランティアとして潜入し、支持者たちを取材していたのだ。

 ここでは22年に刊行され、トランプ復活を機に新書化された『ルポ 「トランプ信者」潜入一年』(小学館)から一部を抜粋。オハイオ州北部のトレドで開かれた支援者集会に参加した横田さんが目の当たりにした「トランプ信者」の実像とは――。(全4回の2回目/続きを読む

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「ほかの政治家とは違い、必ず約束を守る」

 トレドに到着した私がいったんホテルに荷物を置き、会場に来たのは、午後6時すぎ。すでに、警備のための警察車両や、マスコミが集まっているのが見える。

 ひときわ目立ったのは、会場の真ん前の駐車場にピックアップトラックを停め、その後ろに、「TRUMP UNITY」という文字を載せた15メートルほどのトレーラーを積んで、大音量で『Y・M・C・A』のメロディーにトランプを称賛する歌詞をのせた音楽を流していた男性だ。静まったダウンタウンが、目を覚ましそうな音量だった。男性は眼鏡をかけて、「トランプ 2020」の文字が入った毛糸の帽子を被っていた。

トランプの私設応援団長のロブ・コーティスの車両「TRUMP UNITY」 著者撮影

 いったい何をしているんですか? と、思わず声をかけずにはいられなかった。

 男性の名前は、ロブ・コーティス(54)。映画のPR会社を早期退職し、16年から、勝手連としてトランプを応援しているのだという。

「住んでいるのはミシガン州のデトロイト郊外だよ。そこから、このトラックで、ハワイとアラスカを除く本土全48州を回り、トランプを応援しているんだ。これまで2万6000マイル(4万1600キロ)を走った」

 ──なぜそんなことをしているのですか。

「大統領の前向きなメッセージを伝えて、アメリカを勇気づけようとしているんだよ。トランプはもともと政治家じゃないだろう。不動産業で大成功したビジネスマンだ。その経営者のセンスを活かして、アメリカという国の舵かじ取りをしてほしいのさ。それに、彼の語る家族を大切にする価値観も大好きだ。運動資金は支援者からの寄付金だ。10万ドル以上が寄付で集まったし、自分自身のお金も使っている」

 ──トランプのどこが好きですか。

「大統領の言っていることは、いつも筋が通っている。それにほかの政治家とは違い、必ず約束を守るだろう」

 ──トランプの選挙公約の1つに、海外での戦線を拡大しないというのがありました。けれど、数日前に、アメリカ軍がイランの軍司令官ソレイマニを殺害したため、アメリカとイランは今、戦争の瀬戸際にあるとも報道されています。