世論調査会社ギャラップによると、トランプ政権の発足から2020年1月の時点までの平均の支持率は41%。最高値で49%、最低値で34%である。
支持率が50%を超えたことがないのは、トランプが初めてだ。
もちろん支持率には波があるものの、オバマ政権の最高支持率は69%、ブッシュ政権(子)は90%、クリントン政権は73%――。彼らと比べると、トランプがいかに不人気なのかが分かる。統計を取り始めたルーズベルト以降で支持率の平均値が53%であるのと比べても、ずいぶんと見劣りがする。
一方でトランプの不支持率は、大統領就任直後の47%が一番低く、その後、60%に達したことが5回ある。
カーペンターの言う通り、こんなに人気のない大統領はこれまで存在しなかった。
しかし、それでもトランプ再選の可能性が決して低くないとされるのは、徹夜をしてでもトランプを見たいという熱狂的な鉄板支持者がいるからだ。
カーペンターが牧師を務める福音派のキリスト教徒も、トランプの鉄板支持者として知られる。有権者の26%を占める白人福音派のうち、前回の大統領選挙では、その8割以上がトランプに投票している。
国民皆保険に反対
話をカーペンターとの取材に戻そう。
──トランプのどこが好きですか。
「オバマは、イランやアフガニスタンなどの政策でぶれるところがあったと思っている。もっと一貫性を持ってほしかったね。外交面でオバマは弱腰に見えたんだ。それに対し、トランプは一貫しているよね。言うことにもやることにも、すがすがしいほどブレがない」
その直後、カーペンターが驚くべきことを口にした。
「僕はオバマが掲げた保険制度には反対だった。保険は一人ひとりが自由に選ぶべきだと思っている。トランプはそれを元に戻そうとしているだろう。僕自身、去年1月に前立腺ガンの手術を受けたけれど、会社の保険があったので7000ドルの支払いだけで済んだ。保険がなければ、40万ドルかかっただろうね」
どちらの数字も信じられず、私はノートに書いた数字をカーペンターに見せたが、数字に間違いはない、と言う。アメリカで病気にかかったために毎年何万人もが破産するというのは本当だな、と実感した。
保険があっても前立腺がんの治療に7000ドルというのは高すぎる。無保険ということは保険に入る金銭的余裕がないということなのに、40万ドルの治療費なんか払えるわけがない。
そうした数字は、アメリカの保険制度には改革が必要だという証左だ、と日本人からすると考えがちだが、カーペンターは違うと言う。
「どういった健康保険に入るのかは、個人的な問題だ。それを政府のお仕着せで、みんなが同じ制度に入ることには強く反対するよ」
生まれてきたときから国民皆保険という制度を享受して日本で育ってきた身には、なんとも理解に苦しむ話である。しかし、その声はアメリカでは決して少数派ではない。共和党支持者はもちろん、民主党支持者の中でも国民皆保険に否定的な意見を持つ人は少なくない。
支持者の話を聞いていて思ったことは、トランプも興味深いのだが、トランプ支持者の話もそれ以上におもしろい、ということだ。トランプと並んで、その支持者たちもこの本の主役として扱えないだろうか、などと考えをめぐらせた。
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