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「赤ちゃんはママがいい」発言の根っこにある安倍政権と「親学」の関係

学級崩壊も非行も「伝統的子育て」復活で解決できる!?

2018/06/02

genre : ニュース, 政治

山東昭子 自民党・元参院副議長
「子供を4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」

朝日新聞デジタル 2017年11月21日

山東昭子氏 ©時事通信社

 2017年11月に行われた党役員連絡会での山東氏のこの発言も物議を醸した。山東氏のこの発言は、大学教員や弁護士らでつくる「公的発言におけるジェンダー差別を許さない会」による2017年のワースト・ジェンダー差別発言に選ばれた(毎日新聞 1月10日)。

安倍晋三 首相
「核家族化が進む中で、大家族を取り戻すのは並大抵ではない」
「大家族で支え合う価値を社会全体で改めて確認すべきだと思います」

首相官邸HPより 2014年7月19日

 萩生田氏は先の講演で「子育てのほんのひととき、親子が一緒にすごすことが本当の幸せだと私は思います」とも発言していた。加藤氏のアピールポイントは「大家族」だ。こうした家族観は安倍政権全体の主張でもある。

 安倍首相は2014年に山口県で行われた「長州『正論』懇話会講演会」で「大家族」の良さを説き、「大家族を評価するような制度改革を議論すべき」「こういったものを政策的に応援することも一つのアイデア」と語った。安倍首相は著書『美しい国へ』の中でも「『お父さんとお母さんと子どもがいて、おじいちゃんもおばあちゃんも含めてみんな家族だ』という家族観と、『そういう家族が仲良く暮らすのがいちばんの幸せだ』という価値観は、守り続けていくべきだと思う」と記している。家族が仲良く暮らすのは良いことだが、「いちばんの幸せ」かどうかは当事者が決めれば良いことだ。

安倍晋三首相 ©文藝春秋

 安倍首相の考え方の背景にあるのは「親学」という思想だ。「明星大学教授で日本会議の役員も務める教育学者の高橋史朗氏が提唱しているもので、安倍首相は2012年に発足した「親学推進議員連盟」の会長を務めている。また、同議連には下村博文元文科相、伊吹文明元衆院議長など名だたる議員が名を連ねている(以前は鳩山由紀夫氏も顧問を務めていた)。

「伝統的子育て」で発達障害も予防できると主張

「親学」では「伝統的子育て」を何より重視し、学級崩壊も非行も「伝統的子育て」が復活すれば解決できると説いている。また、「伝統的子育て」で発達障害も事前に予防できるとも提唱していた。つまり、子どもの発達障害の原因は幼児期の親の愛情が足りないせいだという主張なのだが、科学的にも医学的にも根拠がない。「親学」は、女性の社会進出によって伝統的育児が崩壊したと主張している。つまり、大まかに言えば「核家族ではなく大家族」で「女性は家庭で育児に専念せよ」とする思想であると考えていいだろう。

 第一次安倍政権時代の07年、政府の教育再生会議において、当時首相補佐官だった山谷えり子参議院議員が中心となり「親学」を広めるための「『親学』に関する緊急提言」をまとめたが「家庭教育への政府の介入」として大きな批判を集めた。下村氏は文科相就任前の2012年、ブログで「発達障害を予防する伝統的子育てとは」という「親学」の考え方にもとづいた記事を発表している(後に撤回、記事を削除)。