結局、ユーチューブにはまって、「不正選挙」「中国や北朝鮮の介入」などの陰謀論に傾いて非常戒厳を布告した尹大統領だけでなく、一般市民にまでユーチューブの影響が及ぶ事態になったとも言えそうだ。オールド・メディアよりもSNSやユーチューブに影響された政治行動は、すでに昨年の東京都知事選や兵庫県知事選でも指摘された現象だ。

大統領職復帰の可能性

 早ければ2月末にも結論が出る憲法裁判所の弾劾審理はどうなるのか。判事(定数9人)のうち、現在空席の1人を除いた8人中、6人が賛成すれば、尹氏は弾劾される。韓国検察当局は1月26日、全国検事長会議を開いて検察幹部の意見を集約したうえで、尹氏を内乱罪で起訴した。元大統領府幹部も「司法の専門家が出した結論をみれば、憲法裁も弾劾を支持するのが道理だろう」と語る。ただ、その一方、「憲法裁は世論にも影響される。8人中3人が弾劾を支持しない可能性もないわけではない」と語る。

 そうなれば、尹氏は刑事訴追された身分ながら、大統領職に復帰する。いわば獄中政治だ。もちろん、韓国内で「大統領職務執行に問題がでるため、釈放すべきではないか」という声が出て、在宅起訴に切り替わる可能性も十分ある。一方、野党は納得せず、徹底抗戦に出るだろう。尹氏の大統領任期である27年5月まで、政治空白が続くことになる。

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 トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩総書記との会談に意欲を示し、国防総省関係者からは在韓米軍削減を模索する発言も出ている。韓国で政治空白がより許されない時期に、こうした展開はまさに不幸としか言いようがない。