「被害者影響陳述書」とは

 米司法省によると、「被害者影響陳述書」とは、裁判官が被告に判決を下すにあたって検討するために被害者から裁判所に提出される書面または口頭の陳述書のこと。陳述書には、犯罪の直接的な結果として被害者や他の人たちが被った感情的、身体的、および経済的影響が記述されており、書面による陳述書は通常、被告と弁護士が確認する。つまり、水原被告はこの陳述書を確認したと思われる。

 また、犯罪被害者権利法に基づき、被害者には、判決前に意見を述べる権利が与えられていることから、大谷選手は判決時に発言したい場合には、発言することも可能だ。

 「被害者影響陳述書」には3つの目的がある。 

ADVERTISEMENT

 第一に、犯罪を被った結果、被害者や被害者の家族、被害者の身近な人が経験したことを、被害者が被害者自身の言葉で表現する機会を得ることにより、多くの被害者は犯罪によって直面した試練にいくらか終止符を打つ助けになる。

 第二に、裁判官は被告にどのような判決を下すかを決定する際に「被害者影響陳述書」を役立てることができる。つまり、裁判官は被害者の意見を考慮に入れて判決を下すことができるわけである。大谷選手が水原被告に対してどのように感じているかが、量刑に影響を与えることになるかもしれない。

 第三に、「被害者影響陳述書」は、被告が被害者に支払う必要がある金額を裁判官が判断するために使われる。そのため、陳述書には、犯罪が被害者に与えた経済的影響を確認して評価するための経済的損失陳述が含まれているという。経済的損失とは、被害者が支払った費用や犯罪を被ったことにより被害者が負っているお金のことで、それを考慮の上、裁判官は被告が被害者に支払う賠償額を決めるわけである。

大谷選手はどのようなことを述べているのか

 大谷選手は「被害者影響陳述書」の中でどのようなことを述べているのか? まず、考えられるのは、経済的な被害についてだ。

©︎文藝春秋

 水原被告は大谷選手になりすまして、大谷選手の口座があるA銀行から繰り返し送金した。求刑文書によると、それにより、大谷選手が受けた経済的損害は、2021年11月15日の4万10ドル、2022年2月4日の30万ドル、2022年2月28日~2023年10月13日の36回にわたる送金の合計少なくとも1500万ドル、2023年12月15日~2024年1月8日の3回にわたる送金の合計125万ドル。さらに、水原被告は歯科治療のために大谷選手のビジネス用のB銀行の口座から6万ドルの小切手を使う許可を大谷選手からもらったものの、その6万ドルは水原被告が個人的な目的で使うために自分の銀行口座に入れ、実際の歯科治療費は大谷選手の許可を得ることなく、A銀行のデビットカードで支払ったことや、リセールするためにオンラインで購入したベースボールカードの代金約32万5000ドルを大谷選手のA銀行の口座から引き落としたことも説明されている。水原被告が大谷選手のA銀行の口座から騙し取った金額は1697万5010ドル以上としている。