水原被告は「強欲」
一方、水原被告は、判事への申立書の中で、通訳の仕事だけではなく大谷選手の身の回りの世話までしていたことから24時間365日待機状態になるほどの激務だったにもかかわらず給料が安く、お金に困って賭博に走り、ギャンブル依存症になった趣旨を訴えて、禁錮18ヶ月の情状酌量を求めている。
もっとも、検察側はギャンブル依存症という水原被告の主張については懐疑的だ。求刑文書は「彼がギャンブル依存症だったとしても、彼が大谷選手から盗んだお金をギャンブルとは関係のない数多くの個人的な出費のために使ったことから、ギャンブル依存症という主張は被告の行為を十分に説明できるものではない。賭博で勝ったお金を大谷選手の口座に戻さず、自分の口座に送金させたことは、犯罪はギャンブル依存症によって引き起こされたという主張を損ない、強欲という別の理由を浮き彫りにする」と、水原被告の犯罪は強欲が起こしたものという見方をしている。
さらに、検察は、1月30日には、水原被告が大谷選手のお金を盗み始める前に「ギャンブル依存症に苦しんでいたという証拠はない」と水原被告の申立てに異議を唱える文書を提出したとESPNが報じている。水原被告は、犯罪は週に4、5回カジノに通うという長年のギャンブル依存症のせいにしているが、捜査官が国内30カ所以上のカジノを調べたところ、水原被告は唯一、2008年の週末にミラージュのカジノで200ドルを費やしていただけだったという。
また、水原被告には大谷選手のお金を盗むほど大きな借金も抱えていなかったという。水原被告が最初に大谷選手の口座から不正送金したのは2021年9月で、その金額は4万ドルだが、当時、彼の口座には3万4000ドル以上あったというのだ。そのため、検察は「ミズハラは自分の金を使って胴元に支払うこともできたが、そうせずにオオタニから盗むことを選んだ」、賭博で勝ったお金も自分の口座に入金していたことから大谷選手に「返済する意図はなかった」と述べている。水原被告は家賃も大谷選手のデビットカードを使って支払っていたという。
求刑文書の中でも指摘されていた“問題点”
水原被告はローンや車代などの経費を支払う必要がなく、銀行口座には2023年3月には3万ドル以上、2024年3月には19万5000ドル以上と相当の残高があったことも指摘されている。検察は「水原氏は真の反省を示さず、大谷氏から何百万ドルも盗んだことを正当化しようとしている」と水原被告に反省の様子が見られないことを問題視しているようだ。
強欲がもたらしたと検察側が主張している、大谷選手への約1697万ドル(26億円余り)の賠償金。しかし、米司法省によると「裁判官が被告に賠償金の支払いを命じた場合、被告が命じられた金額の全額を被害者に支払うことができるという保証はない」とある。つまり、水原被告は賠償額全額を大谷選手に支払うことはできないかもしれない。ことに、それが、検察側に求刑されている巨額な賠償金となった場合、難しいだろう。求刑文書の中でも「返済は不可能」と指摘されている。そうであるとしたら、水原被告は、結局、1600万ドルを超える巨額の金を使い逃げしたということになる。そんな使い逃げに対し、どのような量刑が言い渡されるのか、2月6日の判決が注目されるところだ。
