文春オンライン

UMS主義者、かく語りき――衣のユニクロ、住の無印良品、食のサイゼリヤ

楠木建の「好き」と「嫌い」 好き:UMS 嫌い:ブランド物

2018/06/12

 あくまでも個人的な好き嫌いの話として聞いていただきたい。

 そのときの世の中の「カッコイイ」のど真ん中にあるものがスキではない。あるときから「スティーブ・ジョブズは神だ!」ということで、アップルが強烈なブランドとなった。みんながいっせいにiPhoneを使いだす。こうなるともういけません。もちろんジョブズ氏は稀代のイノベーターにして事業創造者として尊敬している。しかし、「これがクール!」という社会的コンセンサスができてしまうと、僕にとってはあまりクールでない。

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 スターバックスでMacBookを開き、横にはiPhone、耳にはAirPod、腕にはApple Watch。ま、スキな人にとってはそれが「ライフスタイル」ということなのだが、僕は当面アップル製品だけは使わないようにしている。社会的にバランスをとるためにも、その方がイイ。

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アップル製品を生活から排除する

 電子機器でいえば、いま最高にクールなブランドはソニーだ(あくまでも僕の中で)。iPhoneよりも断然エクスペリア。タブレットもiPadではなくエクスペリア。仕事場のPCはThinkPad。持ち歩きのPCはLet’s note。

 アップルのイノベーションに敬意を表して、さすがに携帯用音楽端末だけはクラシックなiPodをしばらく使っていた。ところが、 音楽を聴くのが好きな僕にしてみれば、iPodでは音質が物足りない(とくに付属のイヤホンは論外の音質なので、すぐにシュアーのものに替えた)。そのうちAstell&Kernというイイ音がするのを見つけたので、そちらに買い換えた。この時点でめでたく私物からのアップル製品の一掃に成功した。以来アップルとは取引はない。

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 若い人はイメージしにくいだろうが、かつてはマイクロソフトがポップでヒップだった時代というものがあった。Windows95の発売日には販売店に長蛇の列ができたものだ。当時のアップルはマイクロソフトにボコボコにやられ、瀕死の状況。当然のことながら僕は極力マイクロソフト製品を排除し、不便だったMacを断固として使っていた。

 時は流れ、今となってはマイクロソフトというと筋金入りのおっさんというか、もはやB to Bの質実剛健な会社である。なんのためらいもなくウィンドウズやオフィスを使っている。いやー、ウィンドウズってイイですね。

 服にしても、ブランド物をすっかり買わなくなった。それでも若い頃はラルフローレンがスキだったし、もう少しハイブランドでいえば、90年代、30歳前後の頃はイキがってアルマーニのスーツを買ったこともある。いまにして思えば自分でも信じられない。

 このところの僕は衣食住の基本的消費に関してはUMS主義者である。すなわち、衣のユニクロ(U)、住の無印良品(M)、食のサイゼリヤ(S)だ。僕はこの3つを愛してやまない。GAFA(IT時代のプラットフォーマーとして君臨しているグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのこと)もスゴイが、UMSも偉い。