食のS
UMSの残りのひとつ、サイゼリヤはいよいよ端倪すべからざる企業である。家の近所にあるので前から存在は知っていたが、実際に利用するようになったのは5、6年前からだ。僕の仕事(競争戦略についての学芸)の関心で、『サイゼリヤ革命』『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』といった、サイゼリヤについての本を読んだのがきっかけだった。
調べれば調べるほど、外食業界におけるサイゼリヤの戦略ストーリーは秀逸であることが分かってきた。フォーカスが効いている。ひとつひとつの打ち手が実に論理的。しかもそのすべてがきっちりとつながっている。ストーリーが時間をかけて練り上げられている。
素材から加工、調理までグローバルなサプライチェーンを構築し、質とコストのトレードオフを乗り越える。流行を追った新メニューの導入に依存しない。コストパフォーマンスを計算しつくした特定少数のメニューを長いこと売り続ける。家での「内食」の自然な延長として頻繁に来店するリピーターをターゲットにする。味にしても、普通の外食よりも控えめにし、刺激はなくても飽きがこないようにする。無印良品と一脈通じるところだ。
これはたいしたものだと思い、早速近くのサイゼリヤに行ってみた。改めて驚いたのはその値段である。異様に安い。にもかかわらず、一品一品はきちんとおいしい。安いので、メインディッシュだけではなく、あれこれとサイドディッシュを楽しめる。結果的に支払う総額は普通のファミリーレストランとそう変わらないが、満足度と充実度が違う。
以来、頻繁に利用しているが、確かに味に飽きがこない。つい先日も2名で行った。シェフサラダ、ソーセージグリル、青豆の温サラダ、プロシュート、バッファローモッツァレラのカプレーゼ(おいしいのでお代わりした)、新じゃがのオーブン焼き、フォカッチャ、野菜ソースのハンバーグ、デザートにプリンを注文した。僕はお酒を飲めないのでドリンクバーでメロンソーダ(これがスキ)だのエスプレッソだのを飲んだが、同行者はビールをジョッキで1杯、さらにグラスワインの白(100円! これが十分においしいらしい)を2杯飲んだ。
「王侯貴族のような……」とまではいえないかもしれないが、「豪遊」といって差し支えない内容である。それなのにお代は4千数百円。現代の奇跡といっても過言ではない。
食でいえば、無印良品も強力だ。家でひとりで食事を作って食べるときなど、無印のレトルトのカレーやパスタソースを愛用している。モノのデザインと同様に、味つけが自然で飽きがこない。そのままだと芸がないので、自分の好きな食材に加えることにしている。カレーならマッシュルームを軽くソテーしたものを大量に投入する(スキなものをスキなだけ投入できるのが自宅ご飯のイイところ)。「生ハムときのこのポルチーニクリーム」にはカリカリにしたパンチェッタを載せる。もちろんマッシュルーム(これがとにかくスキ)も大量に追加投入する。