「まさか……。おとなしい子だったので信じられない……」

留学生の親が語る、息子が犯した殺人事件の衝撃

 2003年6月、福岡市で起きた一家4人殺害事件。中国人留学生3人による犯行と判明したこの事件は、日本社会に大きな衝撃を与えた。事件から数カ月後、犯人の一人である楊寧(ヤン・ニン)の実家を訪ねた記者は、息子の犯行を知らされたばかりの両親と対面する。

楊寧

「私たち父と母は、日本で苦労している息子を全力で支えようと考えていました」

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 楊の父親は、涙ながらに語った。彼らは息子の留学のために親戚から借金をし、自分たちの生活を切り詰めてまで支援を続けていたという。

「私は月収1000元(約1万6000円)しか貰っていない建築会社の社員です。しかし留学には十数万元(160万円以上)かかります。私は自分の一生を賭けるつもりで親戚から借金をし、息子を日本に送り出しました」

 父親の言葉からは、息子への期待と、その期待が裏切られた悲しみが伝わってくる。

事件の数カ月前には学費を滞納し、除籍処分

 楊は2001年10月に来日し、福岡市内の日本語学校に通った後、北九州市の私立大学に入学。しかし、徐々に大学を休みがちになり、事件の数カ月前には学費を滞納し、除籍処分となっていた。

「息子が日本に行く前に3つのことを言いました。1つは、日本でまじめに勉強して、まじめに働いて、いくら辛いことがあっても辛抱すること。2つ目は、よく勉強しなければいけないということ。3つ目は、日本の法律はきちんと守らなければならないということです」

中国にある楊の実家に取材に行った時の写真

 父親の言葉には、息子の将来を案じ、まっとうな人生を歩んでほしいと願う親心が込められていた。しかし、その願いは息子の予想外の行動によって打ち砕かれてしまった。

 事件発覚後、楊は共犯者の王亮(ワン・リャン)とともに中国に帰国。その後、中国の公安当局に身柄を拘束された。日本の捜査当局は中国側に「処罰要請」を行い、事件の全容解明に向けて動き出した。

 「しかし、もし真実がわかり、息子が本当に事件に関わっていたとしたら、厳しい処分も納得します。死刑になっても仕方がないと思っています。ただ、父母として、最後まで自分の子供のことは信じたいです」

 父親の言葉には、息子への愛情と、犯した罪への覚悟が交錯している。この事件は、留学生の親たちの夢と希望、そして現実の残酷さを浮き彫りにした。

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 この事件について、現在「文春オンライン」でライター・小野一光氏が連載をしています。①「女の子の足首には9kgのダンベル、胸部には電気コード…家族4人を殺害・海中に遺棄した中国人元死刑囚(40)の死刑執行日」、②「海中に手錠が付けられた小学生2人と両親の遺体が…事件後に上海行きの便で帰国した「疑惑の中国人留学生」の正体」、③「福岡の家族4人を惨殺、ダンベルで遺体を海に沈めた中国人元死刑囚の父親が語ったこと「死刑になっても仕方がない。ただ…」」、④「「中国人元死刑囚の父親は狼狽し…」小学生2人と両親の遺体が見つかった殺人事件は、中国人3人のみの犯行なのか「捜査常識では考えられない」」または、以下のリンクからお読みいただけます。

 

女の子の足首には9kgのダンベル、胸部には電気コード…家族4人を殺害・海中に遺棄した中国人元死刑囚(40)の死刑執行日

 

 事件発生から20年以上にわたって取材を続けてきたライター小野一光氏が徹底的に描く、全真相とは。

 

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海中に手錠が付けられた小学生2人と両親の遺体が…事件後に上海行きの便で帰国した「疑惑の中国人留学生」の正体

 

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福岡の家族4人を惨殺、ダンベルで遺体を海に沈めた中国人元死刑囚の父親が語ったこと「死刑になっても仕方がない。ただ…」

 

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「中国人元死刑囚の父親は狼狽し…」小学生2人と両親の遺体が見つかった殺人事件は、中国人3人のみの犯行なのか「捜査常識では考えられない」

 

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