NHKの連続テレビ小説の総合テレビでの放送時間が従来より15分前倒しされて、午前8時ちょうどに始まるようになってから今春で15年が経つ。2010年当時、朝ドラは視聴率が低迷しており、放送時間の変更はテコ入れの一環として行われた。その記念すべき最初の作品となったのが、マンガ家・水木しげるの半生をその妻の立場から描いた『ゲゲゲの女房』である。

NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(2010年)

 同作はスタート時こそ、朝ドラの初回視聴率の最低記録を更新してしまったものの、貧しい生活のなかでもマンガへの情熱を失わない夫と、それを健気に支える妻の関係がしだいに注目されるようになる。当時普及しつつあったSNSでも連日話題にのぼり、その相乗効果もあってか視聴率は回が進むにつれて上昇、最終回では20%を超えた。

 それより前の10年間の朝ドラは現代物が主流であり、昭和の高度成長期以前の時代が舞台で、なおかつ特定の実在人物を主人公のモデルとした作品はわずか2作にとどまったが、『ゲゲゲの女房』のヒットを機に再び主流となる。それほどまでに同作の残したインパクトは大きかった。

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2004年、音大在学中に俳優デビュー

 この『ゲゲゲの女房』で主人公の水木しげる夫人・布美枝を演じたのが、きょう2月8日に40歳の誕生日を迎えた松下奈緒だ。松下は東京音楽大学在学中の2004年、ドラマ『仔犬のワルツ』で俳優デビューした。音大ではピアノを専攻し、デビュー以来20年間、俳優と音楽の二刀流を貫く。ドラマや映画への出演とともにコンサートやアルバム制作をコンスタントに続け、演奏だけでなく作曲家、歌手としても才能を発揮している。

松下奈緒。2月8日に40歳の誕生日を迎えた ©時事通信社

 一昨年(2023年)より大阪・朝日放送の旅番組『朝だ!生です旅サラダ』でMCを務めているが、松下自身、関西の奈良県に生まれ、兵庫県で育った。ピアノを始めたのは3歳のとき。同じ歳でバレエも始め、小学校時代も継続したが、中学に上がるとき、ピアノとレッスンの曜日が重なり、どちらか選ばなければならなくなる。バレエは小柄なほうが有利とされ、すでに背が高かった松下は迷わずピアノを選んだ。

 そういえば『ゲゲゲの女房』の布美枝は長身がコンプレックスだったが、松下自身も長らくそうだったという。かつて好きだと告白した男の子に長身を理由にフラれたこともあったと、フォトブックで明かしている(松下奈緒『Laugh & Leilani』ワニブックス、2010年)。