「セックスできるチャンスがあったら、断ったことがない。ワクワクするから」
19歳のマンガ家デビューから、女性の性をテーマにし続けてきた安彦麻理絵さん(55)はそう語る。
「女性の性欲は40代で男性を追い抜く」などさまざまな俗説が飛び交う“老いと性欲”問題や、全然モテなかったという学生時代、そして「1回も断らなかった」という20代について話を聞いた。(全3本の1本目/2本目を読む)
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転校した先で感じた「あーあ、ハズレか」という視線
――安彦さんが初めて「性欲」を感じたのはいつ頃ですか?
安彦 幼稚園か小1ぐらいの頃かも。仲良しの女の子の家に遊びにいくと、その子がいつも父親のエロ本を持ち出してくるんですよ。でも私は別にイヤじゃなくて、面白がって一緒に見てたんですね。そのうち、男女がハダカでいろんなことをする姿に、何かあやしげなものを感じて。今思うと、あれが性欲のめばえだったのかな。
――では、初体験もわりと早めに?
安彦 それが、高校までは山形にいたんですけど、まったくモテなくて。自分がずっと嫌いでコンプレックスだらけでした。
――何があったんですか。
安彦 私、子どもの頃は転校を繰り返していたんですよ。そのことが、自分の根本の性格にすごく影響してると思います。
うちは父の転勤が多くて、私は小1から小5まで、毎年転校してたんです。そうすると、転校初日に新しい学校の教室に入ったとき、クラス全員が私を一瞬、めちゃくちゃ期待の眼差しで見てくるのがわかって。
――小学生にとって、転校生が来るのは大ニュースですもんね。
安彦 そうなんです。だから「今度の転校生はかわいいか、ブスなのか?」という期待を一身に浴びて、でも「あーあ、ハズレか」の雰囲気になるところまでがセット。これを毎年味わうんです。
運動や勉強が得意なら挽回できたのかもしれないけど、私は運動オンチだったし、成績がいいわけでもなくて。毎年「がっかりされる自分」を経験していたら、本当に自分に自信をなくしちゃったんですよ。
――そのうえ、ようやく学校に慣れた頃にまた転校するのは、小学生にはハードですね。
安彦 そうですね……しかも、小5のときの転校先で、決定的な事件があって。