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「抗生剤を投与する時間です」
リトビネンコは静かに従った後、こう言った。
「私はロシア軍の内部で何が起こっているかを知っている。このような法律が制定されると、軍は直ちに計画を実行するために動き始め、新たな部隊も設立される。法の制定は軍や秘密情報機関にとっては命令と同じだ」
ベッドの患者は、「ロシア政府にやられた」と主張し、「おそらく彼らは私が3日以内に心不全で死ぬと思っていたのだろう」と述べた。
このインタビューとほぼ同じころ、リトビネンコの血液検査の結果、タリウムが検出されたことがわかった。これを受け、サンデー・タイムズ紙が19日に病状を報じ、欧州のメディアが一斉に伝え始めた。
ロンドン警視庁がついに捜査に乗り出す。マリーナは当時の心境を私に説明した。
「トンネルの向こうにかすかな光が見えました。何が起きたのか、そして、どう対処すべきかが、わかったような気がしたんです」
小倉 孝保(おぐら・たかやす)
毎日新聞論説委員
1964年滋賀県長浜市生まれ88年、毎日新聞社入社。カイロ、ニューヨーク両支局長、欧州総局(ロンドン)長、外信部長を経て編集編成局次長。2014年、日本人として初めて英外国特派員協会賞受賞。『柔の恩人』で第18回小学館ノンフィクション大賞、第23回ミズノスポーツライター賞最優秀賞をダブル受賞。近著に『ロレンスになれなかった男 空手でアラブを制した岡本秀樹の生涯』(KADOKAWA)がある。
毎日新聞論説委員
1964年滋賀県長浜市生まれ88年、毎日新聞社入社。カイロ、ニューヨーク両支局長、欧州総局(ロンドン)長、外信部長を経て編集編成局次長。2014年、日本人として初めて英外国特派員協会賞受賞。『柔の恩人』で第18回小学館ノンフィクション大賞、第23回ミズノスポーツライター賞最優秀賞をダブル受賞。近著に『ロレンスになれなかった男 空手でアラブを制した岡本秀樹の生涯』(KADOKAWA)がある。
