「飛田新地」というところは土地勘のない記者でも知っている。この男がやっているのはいわゆる女衒だ。それならカンボジアや東南アジアに“出稼ぎ”する女をスカウトし放題だな、と合点がいったが、話はそんなに簡単ではなかった。
非現実的な世界が広がっていた
Kは自身の庭ともいえる夜の街へ車を走らせ、無料パーキングに停めた。
「あまり自分はオモテ歩かんほうがいいんで、少しだけ案内しますわ」
記者の目の前に江戸時代の遊郭を再現したような世界が広がっていた。Kはここでは写真や動画の撮影が禁止であることを静かに伝えてきた。
「お兄ちゃん、こっち見て~」「どこいくん? 遊んでいき~」
両サイドには「小料理店」をうたった木造2階建てが並び、それぞれの1階の座敷部分に女の子が座っている。女の子らは着物や水着、サッカーのユニフォームなど、さまざまな衣装なのだが、どれも体のラインが強調されたデザインで、しかも胸元があらわになっている。通りを闊歩する男たちに手を振ったり、手招きをしたりしながら満面の笑顔とともに色目を向けていた。非現実的な世界に圧倒される。
どの店先にも中年の女性が座っていて、目の前を歩く男性客を誘い込もうと必死だった。こうした「小料理屋」が400メートル四方に160軒ほど連なっているのだ。横を歩くKに値段を聞いてみた。
「この地域のシステムは15分で1万1000円、20分で1万6000円、30分で2万1000円と、5分ごとに5000円が加算されていく感じですね。基本、本番というか……本番しかないです。女の子らは店先だけでなく、奥の部屋にも数人おって、客がつくかつかないかにかかわらず5分交代で軒先に座るイメージです。そうすることによって客も選択肢が増えるし、店も回転率を上げることができるんです」
相槌を打ちながら、「それにしても女の子のレベルが高いすね……」そう記者がつぶやくと、Kは笑いながら続けた。