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「交代です」という声がかかり…
ちょうどそのときだった。「交代です」という声がかかり、2人のうち1人がゆっくりとメイク道具を化粧ポーチにしまい、記者に小首をかしげて微笑むと、部屋を出ていった。Kによれば、この上の階には4つほど部屋があるそうで、1人が目下接客をしているということだ。この真上でコトが行われているのを想像すると、落ち着くことなどできない。
Kは待機部屋の横にあるドアを開けた。そこには事務所のような小部屋があり、スマホをいじっていた男性従業員を外に出すと、記者を招き入れた。事務所といっても六畳一間ほどの狭い空間に、小さなテーブルと両側にソファが向かい合わせで置かれただけの殺風景な空間だった。壁際には女の子の衣装が10着ほど掛かったハンガーラックと、小さな冷蔵庫があった。
「面接に使う程度で、狭くてすんません……」とKは詫びながら冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して、記者の目の前に置き、ドアを閉めた。この部屋なら誰にも気兼ねなくゆっくりと話が聞けそうだ。
Kが向かいのソファに座るのを待ち、改めて本題のカンボジアの話を切り出すと、Kはお茶を含んで、一息つくと、一気にしゃべり始めた。先ほどとは打って変わって声のトーンが低くなったので記者は思わずKのほうに身を乗り出した。