渉外社員らの釈明に納得がいかなければ、幹部らの叱責はさらに過熱し、「足を引っ張ってんのはオマエや。ここで土下座せえ」「各局の金融渉外部に行って、頭下げて来い」と怒鳴り散らした。目標に足りない額を借金に見立て、返済を迫るような場面もあったという。

中国地方の渉外社員は研修での「ロープレ」が苦痛だったと話す。ロールプレイングの略語らしく、出席者たちの前で、順番に顧客への営業を実演させられる。上手にできなければ会場から失笑が漏れ、緊張から途中で何も話せなくなる同僚もいた。この渉外社員は「研修とは名ばかりのパワハラ。数字が上がらない責任を個人に押しつけ、つるし上げるためだけのものだった」と悔しがった。

上からの非常識な圧力

厳しい締め付けによって、退職者や休職者は相次いでいた。「うちの金融渉外部では、新卒が3年以内に7割辞め、通年募集している中途採用者も陰湿な空気に嫌気が差してすぐに辞めます」(九州の渉外社員)という職場もある。

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そんな状況を、上層部は容認していた節がある。各局の営業目標は、渉外社員の人数を基に算出される。実績が低迷した社員がいない方が、目標を達成しやすくなるのだ。心を病んで休職していたある渉外社員は、幹部から電話で「今年度はずっと休んでいてくれ」と求められたと打ち明けた。

渉外社員たちにノルマの達成を求めていた各郵便局の現場トップ、金融渉外部長たちもまた、その上から強い圧力を掛けられていた。

2018年7月、日本郵便近畿支社が開いた会議。支社幹部らと、管内にある各郵便局の金融渉外部長たちが出席していた。実績が低迷している局の部長たちが、「6月の反省と7月の挽回策」について発言させられ、支社幹部らが厳しい言葉を投げかけていく。

私の手元には、当日のやりとりを録音した音声データがある。これから紹介するのは、支社幹部とある部長とのやりとりの一部だ。「○%」という数字は、年間目標を100%とした際の、月間、あるいは1日当たりの進捗度合いを指している。