横浜ベイブリッジに謎のミサイル投下、収まらない混乱、ついには治安維持に自衛隊まで出動…アニメ映画史上、かつてないリアリティで「日本における戦争」を描いたアニメ映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』(監督:押井守)。1993年に公開された作品もかかわらず、なぜいまだ根強い人気を誇るのか? そこで描かれる「戦争のリアル」とは? 新刊『ゴジラvs.自衛隊 アニメの「戦争論」』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

伝説のアニメ映画『劇場版 パトレイバー2』の魅力とは―― ©文藝春秋

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『パトレイバー2』の通信シーンのリアル

小泉悠(以下、小泉) 『機動警察パトレイバー2 the Movie』に「F-16改」が出てきますよね……。

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太田啓之(以下、太田) はいはい、「F-16改ナイト・ファルコン」と「F-15J(改)イーグルプラス」。それぞれF-16とF-15の架空の改良版で、ある程度のステルス性能も持たせた機体です。物語の中で重要な役割を果たします。

高橋杉雄(以下、高橋) この時はまだ名前決まってなかったんですよね。FS-X(次期支援戦闘機、現在の航空自衛隊F-2戦闘機)の。

小泉 だから劇中では自衛隊の戦闘機は「F-16J」なんですね。

航空自衛隊は、現実には支援戦闘機として、F-16をベースに改良したF-2戦闘機を採用した。

高橋 この頃は名称について、「F-2」になる説と「F-16J」になる説とがあって、「F-16J」が有力だったんですよ。

小泉 「そしてここからが本題ですが、自衛隊はこのタイプのF-16を装備していない」(『パトレイバー2』劇中セリフの口真似で)

高橋 おお、劇中のセリフ(笑)。