1995年に放映開始以来、日本だけでなく世界でも人気を集めるアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』。作中では明言されてはいないものの、登場するメカや小道具から「意外な裏設定」がわかることも。史実では1991年に崩壊したはずのソ連は、同作でどんな扱いをされているのか…? 新刊『ゴジラvs.自衛隊 アニメの「戦争論」』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む

「アドミラル・クズネツォフ」級航空母艦の「ヴァリャーグ」は、中国に売却され、空母「遼寧」となっている ©getty

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『新世紀エヴァンゲリオン』のソ連の存在感

小泉 僕『エヴァ』自体の話って、別にそんなにすごい語れるものはないですけど、何が好きって「アスカ、来日」(第8話)で、国連艦隊が「弐号機」を運んでくるじゃないですか。空母「オーバー・ザ・レインボー」がいるんだけど、よく見ると遠くのほうにね、ソ連の「クズネツォフ」級っぽい艦艇がいる。あれでシビれてしまって、たまんねぇなぁと。

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高橋 そこかよ(笑)。

小泉 艦上にSu-33はいるわ、加持が脱出するときはVTOLのYak-38Uで逃げるわけですよ。Yak-38の本当に少ししか作らなかった訓練型のやつ。複座でめちゃくちゃ気持ち悪い形しているんですけど、これを出してくれるか! うれしいなぁ、と。

太田 失敗作ですよね。

小泉 失敗作というか、ソ連海軍の思惑としては、アメリカの哨戒機を追っ払うために空母に乗っけてあるものだから、足が短くても武装が2種類しか積めなくてもいいと。ロシアの海軍史的にはそういうことになっている。

高橋 敵探知のための先行部隊を邀撃できればいい。

小泉 そう、おそらくそういう発想だった。で、実用的な戦闘機を積む空母は、その後のいわゆる「クズネツォフ」級以降でいいんだ、というふうに思ったんでしょうけど、だったら最初から「クズネツォフ」作ればよくね? という疑問もなくはない(笑)。あとYak-38ってアフガニスタン戦争に実験投入しているんですよ。アフガンに持ち込んで、要するに高地の滑走路が作れないところで戦闘機を運用できる、ハリアーみたいな感じに使えるんじゃないのという思惑で持ち込んでみたら、航続距離が短すぎるのと、ペイロードが少なすぎて、まったくどうにもなりませんでしたと。