人口減や人道的配慮など移民や難民を受け入れるべき理由は多くあるものの、そこに摩擦はつきものだ。日本の埼玉県川口市では、暴力や圧政から逃れてきたと主張するクルド人と現地住民の衝突が起き、ヘイトデモまで起きている。「移民問題」はなぜこじれるのか? 移民問題に詳しいジャーナリストの三好範英の新刊『移民リスク』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/続きを読む)

写真はイメージ ©AFLO

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解体業を中心に多数が不法就労

 川口市には、2024年9月1日現在、4万6442人の外国人が在留する。市区町村別では東京都新宿区、江戸川区に次いで全国3番目(2023年末現在)に多い。全人口60万7776人に対する割合は7.6%になる。かつては鋳鉄溶解炉キューポラが象徴する鋳物工場が多く、多くの在日韓国・朝鮮人労働者が働いていた。以前から外国人は身近な存在だったという。

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 国籍別では、中国人の2万5142人を筆頭に、ベトナム人、フィリピン人、韓国人、ネパール人、それに次いでトルコ人は6番目の1558人で、ほとんどがクルド人と見られている。ただしこれは正規に住民登録をした人である(日本全国のトルコ国籍の在留者は2023年6月現在6070人)。

 入管庁の資料によると、不法残留などで収容されながら、健康上、人道上の理由で施設から出た仮放免者のうち最も多いのがトルコ国籍者である。

 2022年末現在で全国で650人(うち男性472人)いたが、その後、数が増え、川口市在留の仮放免者の数だけで約700人とも報じられている(2024年4月13日付産経新聞電子版)。他国籍者も含むが、そのほとんどがクルド人と見られる。

 在留外国人統計(2023年12月)で川口市のトルコ国籍者の在留資格を見ると、「留学」12人、「経営・管理」22人、「日本人の配偶者等」128人、「永住者」(多くは日本人との結婚による)32人など。最も多いのは、「特定活動」の801人。特定活動はワーキングホリデーなど多くの活動が該当する在留資格だが、正規の在留期間内に難民申請をすれば、明らかに難民でない理由や複数回申請の場合などを除き、難民認定手続き中、与えられる。

 この方法で、クルド人のうち生計維持能力がある人を除けばほとんどが、申請から数か月後に就労可の特定活動の在留資格を得ていると見られる。同時に、川口市では、仮放免者(就労できない)や就労不可の特定活動のクルド人が少なくとも数百人、解体業を中心に不法就労しているようだ。

 2023年に入ってから、上陸してすぐに難民申請をするトルコ国籍者が一挙に増えた。その数は、2022年の445人から2406人と5.4倍になった。多くがクルド人とみられ、川口市の多くのクルド人の出身地であるガズィアンテップ県が、2023年2月6日の大地震で大きな被害を受けたことも影響していると見られる。

ガズィアンテップ県 ©getty

 入管庁は、トルコ人とクルド人の区別をつけて集計していない。従って、クルド人コミュニティーの全体像は正確にはわからないのだが、川口市在住のクルド人人口は2024年半ばの時点で2000~3000人と見られる。

 犯罪、迷惑行為は以前からあった。