「伊右衛門」「ザ・プレミアム・モルツ」……数々の商品をメガヒットさせてきた広告クリエイターで、著書『すごい思考ツール』が話題の小西利行さん。「いいものなのに売れない!」と悩むすべての人にヒントとなる、売れるトレンドの生み出し方を伝える。(※本稿は、前掲書から一部抜粋したものです)
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「行動」を生み出せば、“売れる現象”をつくれる
皆さんは、担当している商品が売れなくて困ったことはないだろうか? もっと売れるポテンシャルはあるのになぜか競合に負けているなんてこともあるだろう。あるいは、新しいサービスの反響がイマイチ、つくった施設に人が集まらない、担当したSNSのPR発信がさっぱり話題にならない等々、ものを売る上で「うまくいかないな」という苦い経験は誰しもあると思う。
そんな時、僕が頭に浮かべる言葉がある。それは、「じゃあ『行動』をつくろう」である。あたりまえだが、世の中に知られていない商品に興味を持たせるのは至難の業。だから大きなお金をかけて広告を出したり、タレントを使って興味をひくなどさまざまな施策をうっては苦労するわけだ。ただそもそも商品に圧倒的な差別点があり、ユーザーがメリットを感じれば、欲しい! という購買意欲は喚起されるし、商品情報も勝手に広がるだろう。でもそれがなかなか起きないということは、つまり企業がどれほどすごい商品だと謳っても、本当に決定的な「メリット」があるケースは稀だということだ。
しかし、その商品に決定的な差別化ポイントがなくても、うまく「行動」を生み出すことができれば、“売れる現象”をつくることができる。
「金曜日はワインを買う日。」という名キャンペーン
その昔、「金曜日はワインを買う日。」という名キャンペーンがあった。サントリーがワインを売るためにつくった広告だが、あえてワインの良さをアピールせず、ワインを買って帰ることの幸せを謳うことで爆発的な流行を生んだ画期的なアイデアだった。
今でこそワインを家庭で飲むことは普通だが、このキャンペーン以前は、誰もワインを買って帰って家で飲もうなんて思っていなかった。つまり、このキャンペーンは「ワインを家庭で飲む行動」ごとつくり出したわけだ。週休二日制が浸透しつつあり、金曜が「花金」化していく時代。新しいライフスタイルを探していたメディアや先進層(今でいうインフルエンサー)によって、この「行動」がイケてるライフスタイルとして広められた結果、一般的な「習慣」となって定着した。この習慣を先んじて提案したサントリーは家庭ワインブームで大きくリードし、大きな利益を生み出した。