その後は、沖縄県公文書館所蔵の写真を活用したカラー化に取り組むようになりました。大量の写真の中から、沖縄戦の米兵たちの戦闘シーンや残虐な写真はあえて避けて、まずは見た人が身近に感じられるよう、女性や子どもたちが写っている写真を中心に選びました。

 非常に激しい沖縄戦が進行する中、笑顔で豚を運ぶ女性、手にたばこを持ってポーズをとる若い女性、カメラを睨みつける子供たちなど、懸命に生きている人々の姿が写りこんでいるのを観て、自分も1945年に飛び込んだような気持ちでカラー化を進めました。

地元女性の案内で豚を捕獲し運ぶ海兵隊員たち。女性の手には足付盆など生活雑器も見えるため、家まで荷物を取りに帰っていたのかもしれない。1945年4月6日。所蔵:沖縄県公文書館・カラー画像処理:ホリーニョ

 そうしてSNSに投稿した写真には「こんな写真見たことない」という驚きのメッセージや、祖母の実体験のお話など、様々なコメントが寄せられるようになり、活動のモチベーションになりました。

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 また、過酷な歴史の流れに翻弄されつつ悩み苦しみながら生きる人たちが、一枚の写真をはさんだ向こう側では「今も生きている」、そういう気持ちを持ちながらカラー化作業を続けてきました。

のどを切りつけ自殺を図ろうとした女性を診る米軍の医師。読谷山村にて。1945年4月4日。所蔵:沖縄県公文書館・カラー画像処理:ホリーニョ

 今回、以前より憧れだった沖縄の出版社であるボーダーインクさんから書籍化のお話をいただき感激しています。書籍になることでSNS では届かなかった方々に届けばいいな、という気持ちで書籍化作業をすすめてきました。

 そんな期待がある一方で、この書籍には、過酷な沖縄戦の中において米兵と一緒に笑顔で映り込む人々がいたりと、米軍が意図を持って撮影したであろう写真も掲載されています。いままでのカラー化活動についても、当時のアメリカの印象操作に加担する可能性に戸惑いつつの活動でもありました。

首里城の城壁に星条旗を立てる米兵。所蔵:U.S. National Archives and Records Administration・カラー画像処理:ホリーニョ

 そんな悩みのある私にとっては、今回の書籍化にあたって3名の沖縄の歴史研究者のみなさんが監修や解説文の寄稿を協力してくださることに深く感謝しています。

 読者のみなさんには、まずは好奇心をもちながら個別の写真を観ていただき、続いて研究者の注釈・解説を読むことで、沖縄の歴史について学術的な目線や、加えて歴史の流れを俯瞰しながら受け止めていただけるとも思います。

 この書籍を通じて、その時代のその場所に、確かに生きておられる方々の暮らしや感情に想いを馳せながら、沖縄の歴史を学ぶきっかけになれば凄く嬉しいです。

次の記事に続く 手に「ハジチ」のある高齢女性、米軍基地内で働く女性たち、ジェット戦闘機墜落事故の写真も…カラー化でよみがえる“戦後沖縄のリアル”

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。