「特定の顧客の要望によっては……」
さらに、「モネロ(Monero)」や「ジーキャッシュ(Zcash)」といった、取引の匿名性やプライバシーの強化に特化したいわゆるプライバシーコインへ交換するなどしていけば、盗まれた暗号資産は相当に追跡困難になるとみられる。
現金化するうえでは、ユーザー間での直接取引を可能とするP2P取引プラットフォームを使う方法がある。P2P取引プラットフォームを使えば、第三者を介さずに直接他のユーザーとの間で、暗号資産と現金を交換することができる。互いに身元が分からないので、犯罪者にとって利用しやすい手段となっている。
また、ドイツでの暗号資産取引所の大量閉鎖に表れているように、海外にはマネーロンダリングを意図的に黙認することで収益を上げている暗号資産取引所も少なくない。日本の警察関係者も「様々な犯罪収益が、規制の甘い海外の暗号資産取引所を経由して法定通貨に換えられているとみている」と指摘する。
中には、ビットコインで支払いが可能な高価な物品を購入し、それを転売することで現金を得るケースもある。日本国内における似た手口としては、フィッシング詐欺などで搾取したオンラインショッピングのポイントを使い、iPhoneなどの高額商品を購入して転売するものだ。アナログな方法ではあるが、転売プロセスを経由することでブロックチェーンの記録から現金化のプロセスを切り離すことができる。
より直接的な方法もあると語るのは、海外で暗号資産取引所を運営しているという日本人の男性だ。
「特定の顧客の要望によっては、ビットコインなどの暗号資産を直接キャッシュに換えることもしています。我々のグループは、海外で複数の暗号資産取引所を運営しているので、その中の口座の一つに送金してもらい、20パーセント程度の手数料を取って、キャッシュでお渡しする形です。現状、暗号資産の多くは価格が上昇傾向にあるので、我々としてはすぐに現金化するのではなく、ある程度の値上がり益が出た段階で利益を確定させる方針です」
なお、この男性のグループが具体的にどういった段階を経て最終的に利益を得るかまでは明かされなかったため、その実効性についてまでは判断できない。ただ、この男性が運営しているというような規制の緩い国の暗号資産取引所を使うことで、即日キャッシュに換えることができると謳うブローカーについては、複数の存在が確認できた。
