警察関係者のコメント
警察庁の発表によれば、逮捕者の中には日本国内の企業を標的とした攻撃に直接関与した人物も含まれているようだ。この逮捕は、ランサムウェア攻撃に対する国際的な抑止力を示す重要な成果と言えるだろう。一方で、逮捕を逃れたフォボスの他のメンバーもおり、新たなランサムウェア攻撃を行うグループを形成しているとみるセキュリティ専門家もいる。
ランサムウェアに限らず、金銭を目的としたサイバー攻撃者グループの多くは、国際的なネットワークの広がりの中で、離合集散しながら活動している傾向が強い。この摘発事件のように、警察庁がユーロポールなど各国の捜査機関と連携して行動する動きは、今後さらに増していくだろう。また、サイバー捜査体制の連携・強化とともに、暗号資産を利用した犯罪資金の流れを抑制する技術的手段や規制の整備も並行して進めることが求められている。
課題はまだある。SNSにおける闇バイトの首謀者の特定にしろ、サイバー犯罪の多くは、犯罪者側が匿名アプリやダークウェブなどを介して情報をやり取りするため、実際に被害が発生するまで警察が捜査することが難しい。しかし、闇バイトによる強盗や殺人が連続している以上、後手後手にまわった対応では遅いという声が政府や警察内からも上がっている。
そこで、自民党の治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会(高市早苗会長)は、警察官が身分を隠して犯罪組織に接触することを可能とする、「仮装身分捜査」のためのガイドライン策定など、闇バイト撲滅のための提言を2024年12月に政府へ提出。それがきっかけとなり、警察庁は、本格的に仮装身分捜査を導入することを決めた。
米国をはじめ、海外のサイバー捜査では、仮装身分捜査やおとり捜査によって、匿名空間に身を隠す犯罪者グループを摘発してきた事例は多い。
警察関係者が言う。
「ダークウェブだけでなく、テレグラムやシグナルを使う犯罪者がこれだけ増えてきては、技術的に足跡を辿れませんじゃ話にならない。情報開示請求もままならないのであれば、新たな捜査手法を取り入れるのは必然だろう」
サイバー捜査の遅れが指摘され続けてきた日本においても、他の先進国並みのサイバー捜査環境が整うかどうかが問われている。