なぜ「国民株主」構想なのか?
成田 僕も似た疑問を感じました。というのは、「国民総株主」構想の動機は人によって資産や株から得る利益が違いすぎるという問題意識ですよね。実際、日本は先進国のなかでキャピタルゲイン、つまり資産から得られる収入の格差が大きい国だというデータがあります。だから、この富める者がますます富む格差問題にどう対処するかはたしかに大事です。ただ問題は、その処方箋として何がいいか? です。直接的でわかりやすいのは資産課税やキャピタルゲイン課税の強化です。それではなしに事業を通じてちょっとの株を配ってみんなに弱小株主になってもらうというやり方がなぜいいんだろうと思ったんです。どう思われますか?
前澤 日本における資本の遍在は、ほとんどの人は持っていなくて一部の人だけが持ってるという、いわば頂上が極端に尖った山の状態だと思うんですよね。いま成田さんがおっしゃったのは、おそらくその尖った頂点にある資本を再分配して裾野に分け与えましょうという話だと受け止めました。一方で僕は頂点の位置は今よりもっと高いところに行っていいんだけれど、傾斜をもっとなだらかにしたいと思うんですね。すると急峻なアルプスの山々のようではなくて富士山のような穏やかな山にできる。
山頂に向かう傾斜が緩やかになればなるほど、山の裾野も広くなるし全体のボリューム感は大きくなる。そうやって資本が一部に偏ることのないなだらかな分布を目指したいですね。
成田 今すでに持っている株や資産やそこからの利益をどう分けるかより、パイ全体をどう膨らまし、膨らむパイの広がり方をできるだけなだらかにしたい。つまり、ただの分配より成長を通じた分配に興味があるということですかね。
前澤 結局資本主義の市場に参加せずにただただ再分配を待つだけになってしまうと、いつまでたっても与えられる側であるという意識は変わらないですし、それでは社会や資本市場に主体的に参加できていないという感覚のままだと思うんです。だからやっぱり1株でも2株でもいいから今まで株を持ったことのない方々が実際に持ってみて、それこそ株主総会に出てみたり、たまには配当が入ってくるという体験を通じて、資本市場に参加するひとりとして一役を担ってほしいというテーマもありますね。
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