ーーお母さんは守ってくれないんですか。
あにお 守ってはくれなかったです。いつか守ってくれるかもって信じてたんですけど。 母は自分が悲劇のヒロインになりたいだけの人で「娘がいじめられてる。私、かわいそう。だから他の人守って」と考えて、違う男の人に行っちゃうような人でした。
小2で義父と母の間に弟が生まれて、2年後にもう一人生まれました。義父は自分の子供が可愛くて仕方ないみたいで、逆に私は「もう必要ない」「キモい」と言われたりして、ますますいじめられるようになりました。
ある日学校から帰ったら3DSがバキバキに
ーー家に逃げ場がないですよね。好きなものとかはあったんですか。
あにお 弟が生まれてからは一緒にDVDを見て「魔法戦隊マジレンジャー」とか「侍戦隊シンケンジャー」とかスーパー戦隊シリーズにハマりました。ある日、本屋さんに戦隊の俳優さんが出ている雑誌を立ち読みしに行ったら、罰ゲームで俳優さん同士がチューをしていて「これはやばいぞ」と。それがBLへの目覚めでした。
ただ、うちは本当に厳しくてネットとか絶対使わせてもらえなくて。まだBLという言葉も知らないし、友達にも言えないから「男同士の関係に興味があるなんて、私、おかしいんだ」とずっとモヤモヤしながら過ごしてたんです。1年後にひいおばあちゃんが3DSを買ってくれて、これを使えばネットが見られるぞと気づいて。義父にバレないようにこそこそネットに繋いでいました。
ネットで調べていくうちにBLという言葉があることも、BLを好きな人がいっぱいいることも知って。「イナズマイレブン」に好きなキャラクターがいて、そのファンが集まる掲示板に毎日どっぷりつかってました。でもそれも義父にバレて、ある日学校から帰ったら3DSがバキバキにへし折られていて...。
ーーひどい。あにおさんの家庭は今だと確実にネグレクトや児童虐待だと思うのですが、周りは助けてくれなかったのでしょうか。
あにお 小学6年生の時、学校の先生に「お父さんに殴られたりしてます」と言ったんです。そうしたら先生は「じゃあ、家に報告します」と言い始めて。何度も「やめて」と言ったんですけど、先生は家に電話をかけて。帰ったら義父に「お前は家の恥だ」とボコボコにされました。そこから誰かに相談しても、あんまり意味ないんだなって気づきましたね。
「一生俺の奴隷として生きること」と書かれた誓約書
ーー中学のころはどんな風に過ごしていたんですか。
あにお 父親の暴言はどんどんエスカレートしていって、毎日って感じでした。中学の時は週7で塾に通ってました。親が世間体を気にするタイプで、娘が進学率の低い高校に行くのは嫌だというところがあったので。でも私は美術科のある高校に行きたくて、デッサンとか自力で頑張ってやってたんです。母も一度はその高校への進学をOKしてくれたんですけど、進路を決める最終決定の時に急に「どうせ朝起きられないでしょ。ダメだ」と意味が分からない理由で却下されて。結局、自転車で通える高校の普通科に行きました。
中学3年の頃になると母が毎日「PTAに行ってくる」と言って家を出て、帰ってこなくなりました。金曜日になるとカレーライスか、もやしと卵の炒め物をたっぷり作って、それを置いて出ていっちゃう。私は弟にそれを食べさせていたんですけど、弟にあげると自分の分がなくなって。中3の1年で10キロ体重が減りました。

