筆者は『G MEN’75』関係の取材で、直接話を聞く機会があった。

「私はずっと歌手でやってきて、お芝居やアクションの基礎的な鍛錬も積んでいなかったのでドラマ出演のオファーはお断りしていました。でも『Gメン』のプロデューサーの方から『素のままでいいです。かっこよく銃を構えるポーズをとってもらえればそれでいいです』と言われたんです。人気は知っていたし、“何か自分を変えられるのでは?”と思って出演を決めました」

 初登場時はライブハウスで歌う美人歌手の役で、自身の新曲「さよならの鐘」を熱唱した後、華麗なポーズで犯人を銃撃している。だが、その後の香港ロケでは、犯罪組織に捕らわれて檻に入れられ、人食い虎に襲われるシーンが登場した。

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刈り上げ 本人インスタグラムより

「事前に『おじいちゃん虎でものも噛めないし、爪もボロボロで安全だから』と言われていたんですが、いざ本番が始まったら、檻の隙間に顔を突っ込んで噛もうとするし、爪が衣装に触れるとビリッと破けたんです。飼育係の人は『あれ? おかしいな』なんて言ってましたけど、あれは怖かった。『歌って銃を構えるだけでいいって言ったのに、プロデューサーのうそつき』なんて心の中で叫びながら演じていました」

 それでも夏木にとっては全国区の知名度と演じる楽しさを得た記念すべき作品だった。

そして30歳の時には“刺青ヌード”、あの名監督を照れさせたことも

 29歳の時には、初めてのヌード写真集にもチャレンジ。

 30歳で出演した『鬼龍院花子の生涯』(82年)では暴力団組長の妻を演じ、妖艶な“刺青ヌード”も披露。スレンダーな体形からは想像できない豊かな胸を披露している。

鬼龍院花子の生涯

 31歳で出演した映画『里見八犬伝』(83年)では、「深作欣二監督を照れさせる」という伝説を残している。

 夏木の役は人の精気を吸って若返る妖怪の女王・玉梓。東映の京都太秦撮影所内に作られた真っ赤な血の海のようなプールに、豪華絢爛な衣装をはぎ取った夏木が全裸で沐浴を開始する。自ら血の湯を全身に塗りたくり、我が身の美貌を存分に堪能する表情は官能と背徳の美にあふれていた。

里見八犬伝

 深作欣二監督は夏木の全身で官能を表現するエネルギッシュな演技に圧倒され、終始伏し目がち。夏木が「もっと胸を見せましょうか?」と聞くと、深作監督は「いい、いい、もうそこまででいいから」と終始照れていたという。