好きな男子から「俺、自分より背の高い女の子ダメなんだ」と言われて失恋して…
――ひどいです。
たけべ そんな見世物みたいな扱いを受けるのかと傷つきました。
それに、「富士山」とかって呼ばれている時点で、男性から見たら自分は女として規格外というか、恋愛対象にはならないんだろうなというのも感じていて。
さっき話した好きな男の子からも、「俺、自分より背の高い女の子ダメなんだ」と言われてフラれましたし、初めてできた恋人の母親には、「あら、うちの子より背高いのね」と言われて。
――「女として規格外」という意識から、“女性らしさ”を追い求めるようなこともあった?
たけべ 当時は、今着ているようなパンツスタイルは絶対したくなかったですね。男とか運動部に見られるのが嫌で、スカートとかレースとか、ふわっとしたファッションをしたかったんです。でも、サイズがない、袖も丈も足りない現実に直面して。
あと、高校生ぐらいの時って「皆でおそろいの服でディズニーランドに行こう」みたいなイベントがあるじゃないですか。でも、その時も私だけサイズがないから着られないんですよ。高校生クイズに皆で出ようとなった時も、まったく同じことが起きました。
何かこう、世の中の“尺度”を初めて知ったような気がしましたね。
――髪型もボーイッシュなものは避けていた?
たけべ 髪がショートの時、知らないおじさんに突然、「日本代表?」って話しかけられたんです。「バレーボールの日本代表選手なのか?」ってことだったみたいですけど、こんなことを言われるならボーイッシュな髪型なんか絶対にしないと思って、それからはずっとロングにしていました。
お見合い相手をクラファンで募集した経緯
――身長が気になり出してから、外に出たくない、みたいな気持ちにもなった?
たけべ 26歳まで、とにかく目立たないように、人に見られないようにしていました。だからいつも猫背だし、立つ時も基本的に直立しないで、片足に重心を置くことでちょっと低く見えるようにして。
集合写真を撮る時も、「たけべさんは一番後ろに行って」と言われる前に、自分から率先して一番後ろに行くことで心のダメージを減らしてました。そして、身長を訊かれたら「170ちょっとで高めなんです」で逃げる、みたいな。
でも、当たり前ですけど、隠したって身長が縮むわけじゃないしと、26歳の時、自分の身長を明記した上で、お見合い相手をクラファンで募る“荒治療”に踏み切ったんです。
――“お見合いする権利”に対して出資してもらうかたちでクラウドファンディングを立ち上げ、新聞にも取り上げられるほど話題になったそうですね。
たけべ 高身長ゆえに、自分は女としてのスタートラインにも立てていないのではないかとずっと悩んでいました。
でも、ずっと悩み続けるのがしんどくなってしまって、言葉を選ばずに言うと、恋愛市場で自分の需要があるかどうか確認して、もしそれがないなら、婚活から早く離脱して楽になりたい、その一心だったんです。
撮影=細田忠/文藝春秋

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