――しかし、そのお相手とも別の道を歩むことになったそうで。
たけべ すごくいい方で、婚約までしたのですが、当時、“クラファン公開お見合い”が話題になったことで、複数のメディアから「結婚する時には密着取材させてください」とか、「結婚式はスポンサー付けさせてください」みたいなお申し出があったくらい注目を浴びてしまって。
そもそも交際中から、お相手の方は「クラファンの彼氏」と言われ続けていたんです。加えて、子どもが生まれたとして、子どもがクラウドファンディングで結婚した家の子どもと言われていじめを受けた時にどう守っていくかなど、将来の課題が山積みになり。
「出会い方は珍しいかもしれないけど、今は普通の男女として向き合っているのに、どこに行っても“プロジェクト扱い”されるのがしんどい」と彼から言われた時、私は何にも返せなかったし、それを乗り越えられなかった、というのが破局の原因です。
パートナーは「まったく容姿に興味のない人」コンプレックスを乗り越えて結婚した経緯
――現在は3年前に結婚した方と生活をされているそうですが、高身長コンプレックスを持たずに済むお相手だった?
たけべ 仕事関係で出会った方なんですけど、まったく容姿に興味のない人で、逆に髪を切っても何も言ってくれないのがさみしいくらいです(笑)。
――身長をポジティブに捉えられることも増えた?
たけべ 彼は私よりも背が低いんですけど、わりと筋肉質なので、洋服のサイズが同じことがよくあって、2人ともユニクロとかで同じTシャツを買っていると、「どっちがどっちのかわからないね」と言って、適当にクローゼットにしまってます(笑)。
ファッションの兼用ができるのは楽しいですし、私の容姿に踏み込んでくるようなことをしない人なので、今はすごく心地良く生活できています。
――さっきお子さんの話がありましたが、高身長がコンプレックスだったゆえに、お子さんを持つのが怖いと思うこともありますか。
たけべ もし娘が生まれて、その子が自分と似たような身長になって同じ苦しみを味わうのかと思うと、やっぱり子どもは産めない、というのが正直なところです。それくらい、自分は思春期の時が辛かったんですよね。
ただ、結果的に私たちは別の理由で子どもは作らないと決めたんですけども。
「その人がコンプレックスだと言えば、それはコンプレックス」
――あらためて、9年前にクラファンでご自身の身長を全世界に公開したことをどのように振り返りますか。
たけべ それまでは「背が高くてカッコいいね」みたいに、高身長をポジティブなことと捉えられやすかったんですけど、「背が高いことが悩みになるとは思わなかった」みたいな声をもらった時に、やって良かったなと思いました。
たとえばきれいなストレートヘアの持ち主がいたとして、私から見たら「きれいでいいな」と思っても、本人にとって直毛が悩みなのであれば、他者がそれを否定するのはすごい失礼なことなんですよね。
自分も忘れて失敗しがちなんですけど、その人がコンプレックスだと言えば、それはコンプレックスだと思うんです。
撮影=細田忠/文藝春秋

