「通常であれば、新米は秋に食べる分が売買取引され、残りの米は生産地の倉庫に残っているはずでした。ところが、外食産業をはじめ、多くの業者が、(在庫の枯渇を心配して)1年分の米を昨年秋の時点で確保する動きが起きた。
その結果、JAなど大手の集荷業者へ米が集まらなかったのです。さらに、大手以外の業者が、生産地まで入って米を買い回り、米の円滑な流通を阻害したため、値段が下がらなかったと分析しています」
「消えた21万トン」の米
実際、集荷業者が米農家から買い集めた米は前年より21万トン少なかった。これが「消えた21万トン」の米と呼ばれている。
米を買い占め、値段を釣り上げている“犯人”として、農水省が問題視しているのが、新規参入事業者や転売目的の投機筋だ。福士社長が語る。
「投機目的の人たちの影響が多少はあると思います。ただ、転売目的の一般の人がいくら買ったといっても、100kg程度。トラックで買い付けに来ても1トンくらいなのではないか。米の生産量から比べると微々たるものです」
では、大規模業者が、買い占めているのか。
「業者は、大手の外食チェーンなどに卸すために、1年分を確保しないといけないから持っているだけ。売り渋りも一部でしかないでしょう。米は空調設備の整った倉庫で保管する必要がありコストもかかります。そもそも備蓄米が放出されたら値崩れするリスクもあるので、手を出しにくいでしょう」(同前)
原因は単純ではなく、近年の流通制度の変化が、背景にあるのでは、と福士社長は考えている。
「生産者から消費者への直販が増えています。お米の袋を扱う会社に聞くと、今年は米の生産地からの注文がすごく多いそうです。米農家はJAに米を卸していれば、米袋は用意してもらえるので買う必要はありません。ただ、直販の場合は生産者が米の袋に入れてお客様へ郵送する手続きをとります。以前は収穫した米をほぼ全てJAへ卸していたのですが、それが変わってきている」
また、福士社長は、米の収穫量が増えたという感覚がないともいう。