米の収穫量は正しかったのか

「生産者に聞くと、去年の11月頃から『思ったより収穫が少なくて米が足りない』と嘆いていました。去年の収穫時期は新潟県や石川県で豪雨の被害があって、山形県や福島県でも天候の影響で稲が倒れて被害が出ています。農水省の計算より実際の米が少ないかもしれません」

 農水省は昨年12月に24年産米の収穫量が前年比2.7%増の679万2000トンと発表。同省は取材に「我々が頼りにしている数値の中では、最も精緻」と自信を見せる。しかし、政府が把握している米の収穫量が、そもそも正確ではなかったのでは、と指摘するのは高橋氏だ。

「収穫量は、全国の田んぼをサンプル調査して、1枚(1筆)あたりの収穫量から推計している。そのため、現状との乖離が出てしまう。数字が本当に正しかったのか。収穫量が少なく、品薄であれば値段が下がらないのは当然です」

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 元農水省事務次官で、新潟食料農業大学名誉学長の渡辺好明氏も同様の見解を持っている。

「かつて米の統計調査員は何万人もいましたが、経費や人員の削減で少なくなってしまったのです。現在の農水省は非常に小さなサンプルで全体を推測している。米の生産量や流通量について、正確に把握できていない可能性があります」

 農水省によると現在の調査員は、全国で549人だという。渡辺氏は、現在の米の生産調整(減反政策)も、価格の不安定化に拍車をかけていると話す。

「国が米の生産量の基本計画を作ること自体が、もう時代遅れです。国内だけの需要と供給のなかでギリギリの数字を決めているから、足りないという年も出て来る。海外の農家のように個々の農家の判断で、生産量を決める時代が来ているのでしょう」

 国が把握する数字と現状との乖離が続けば、毎年のように「米騒動」は起こり得る。福士社長は、すでに今夏の米不足をこう心配する。

「日本米穀商連合会が、今年1月に米穀の専門店にアンケートを取ったところ、6割が在庫は4月分から6月分までと回答しました。昨年よりも早く在庫切れを起こす可能性があり、心配しているところです」

 米に悩まされる日々は続くのかもしれない。