倒産寸前にルノー資本を受け入れたのと同じ光景
日産の社長は、社外取締役を中心に構成される指名委員会での議論によって決まる。現メンバーは、委員長で社外取締役のアンドリュー・ハウス氏(ソニー出身)、同永井素夫氏、同木村康氏、同報酬委員会委員長の井原慶子氏(慶応大学特任教授)、ルノー会長のジャンドミニク・スナール氏の5人だ。
重要なカギを握るのは、永井氏の動きだ。氏は日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行し、みずほ信託銀行副社長を経て現職にある。古巣のみずほ銀行とも当然ながら太いパイプがある。「社外取の中でこれまで内田氏に最も理解を示していたのが永井氏。氏の存在があったからこそ内田体制は維持できた」(元日産取締役)との見方もあるほどだ。
ところが前述したように永井氏はホンダとの経営統合および子会社化を支持していたのに、内田氏の統率力のなさから、その意向は踏みにじられる形となった。このため永井氏は今後、指名委員会で内田氏の続投を支持しない可能性がある。おそらく永井氏の動きに木村氏も同調するだろう。
「井原氏も以前から内田体制の在り方に疑問を持っている」(日産幹部)とされる。そうなると5人中3人が内田氏の続投を支持しない可能性が高い。今後、日産内部は内田氏の続投か更迭かでもめることが予想される。
さらにトップ人事に加えて、日産が本当に自力再建できるかどうかも焦点となる。日産では2024年3月末にあった手元資金2兆143億円が、同年9月末では1兆4384億円にまで減少した。2026年には、2020年に発行した外貨建ての社債約56億ドル(約8400億円)の償還期限を迎える。
2024年9月末時点で約1.9兆円分の未使用コミットメントライン(銀行融資枠)があるとはいえ、約7.5兆円の有利子負債のある日産に対して、金融機関がさらなる大型融資をすることは考えにくい。となると、資本増強による経営再建が求められる。まるで26年前の1999年、倒産寸前にルノーから資本を受け入れた時と同じ光景を見ているかのようだ。
※本記事の全文(約3500文字)は、「文藝春秋PLUS」に掲載されています(井上久男「ホンダとの協議を蹴った“プライド高き”日産に残された4つのシナリオ」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・「ホンダから見てスピードが遅いと映った」
・取締役の過半数「協議打ち切り」に反対せず
・5年間で抜本的改革をできなかった内田体制
・倒産寸前にルノー資本を受け入れたのと同じ光景
・日台の「新4社連合」シナリオも
井上久男氏による「日産“鈍感力”社長にいら立つホンダ“暴れ馬”社長」も「文藝春秋PLUS」に掲載されています。
