第5使徒ラミエルを倒すため、日本中の電力を集めた陽電子砲で狙撃――『新世紀エヴァンゲリオン』の人気エピソードと知られる「ヤシマ作戦」。なぜエヴァンゲリオンに撃たせる必要があったのか? 第三新東京市のインフラに関わる事情とは? 新刊『ゴジラvs.自衛隊 アニメの「戦争論」』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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「トゥールハンマー」「グランドキャノン」「ソーラ・レイ」……巨砲兵器の戦場
高橋杉雄(以下、高橋) アニメ独特のあるいは創作独特の概念としての巨砲兵器、それこそ「トゥールハンマー」(『銀河英雄伝説』)とか「波動砲」(『宇宙戦艦ヤマト』)とかは好きなんです。
小泉悠(以下、小泉) 巨砲って、いわゆる“ビッグガン”てこと?
高橋 巨神兵だってそうじゃない?
小泉 ああ、そうですね。「なぎ払えー!」
高橋 ただあんなものリアルにないわけですよ。それこそ黄海海戦の三景艦の32センチ砲とか、46センチ砲(「大和」型戦艦)とかはあるかもしれないけれど。「デス・スター」(『スター・ウォーズ』)とか、「グランドキャノン」(『マクロス』)とかね。
小泉 飛行機として異例の巨砲といえば屠龍(日本陸軍、二式複座戦闘機)とか。
高橋 ああ屠龍、うん。
小泉 AC-130とか。
高橋 AC-130は、“巨”じゃないけど。
太田 「ガンシップ」ですね……。
高橋 「キ109」(日本陸軍の試作戦闘機)は、75ミリ砲か。
小泉 あとはあれか、北朝鮮の「コクサン」榴弾砲とか。170ミリ! でもあれも203ミリに比べて別に大きいわけでもないか。
太田啓之(以下、太田) 「ソーラ・レイ」(『機動戦士ガンダム』)も巨砲ですね。
高橋 太陽電池でエネルギー取った巨大なレーザーですもんね。そのあとはこれがコロニーレーザーになって。1発だけっていうのは、物語が生まれますよね。ただ、宇宙空間の広さに比べるとスペースコロニーの直径ってそんなに大きいものでは当然ないんですよ。だから、使い方が限定される気はしますね。ああいう艦隊が集結しているとか、……小説版だとア・バオア・クーを狙い撃ちするんですね。
太田 味方もろとも焼き尽くす。
小泉 再装填ができない超強力兵器って、じつはICBMとかに近いですよね。
高橋 ICBMは1発だけじゃないので……。
小泉 ではありますけど。次がない、破滅的攻撃を行う兵器って考えると、そういう使い道としてはありかもしれない。
高橋 うーん、あ、マクロスのグランドキャノンも1発だけでしたね。第二射したっけ?