〈時価総額1000億を超える会社に育ててください〉

小川 初対面でしたが、どれくらいインパクトを残せるかで勝負しようと意気込んでいたのを覚えていますね。「今日、ここに来たのは1億円が欲しかったからです!」と必死に話しました。藤田さんに質問されたことも覚えていて、「リクルートとか大きな競合が来たら負けるんじゃないの?」とか。その頃、ABEMAがまだ赤字でメディアにも厳しく報じられていた。だから、ABEMAの例を出して「藤田さんも勝負してるじゃないですか。俺も勝負したいんです」という話を生意気にもさせて頂いて。

藤田 赤字を出してるお前が言うな、と(笑)。

小川 違います、違います(笑)。その夜には、藤田さんの携帯に〈藤田さんの感覚とアドバイスを合わせて時価総額1000億を超える会社に育ててください。自分もこの市場では負ける気がしません〉とメールも送りました。酔っ払っていたせいか、見返すと誤字脱字も多くて……。でも、熱量の高いうちにメールを送っておこうと思って。

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連載は電子版でも配信中

藤田 当時、小川くんは21歳の大学生だった。そうやって行動できる人はなかなかいないですよ。

小川 若気の至りです。

藤田 会の翌日、スタッフから「印象に残った人はいますか?」と聞かれて「小川くんが良かった」と即答しました。正直に言うと、事業計画を聞いて投資を決めたわけじゃない。言語化するのが難しいですが、可能性を感じたんです。当時から「最年少で上場をする」と宣言していたし、もし成功した場合は、かなりの企業に大化けするだろうなって。手堅くこなしていく起業家もいますけど、それだと夢がない。小川くんは情熱もあるし、なにより華があるなと感じました。

上場祝いに“サシ会食”

小川 華があるかどうかは分かりませんが……、大きな夢に対してどう準備をしていくかは大事だと思うんです。最近、ドン・キホーテ創業者・安田隆夫さんの『運』(文春新書)という本を読んだのですが、「運」をどうコントロールしてきたかが詳しく書かれていました。運は誰にも平等に流れている中で、それをどう掴むか。飲み会でも、藤田さんと話せる時間は15人平等に分配されていましたが、出資を受けられた人はごく僅か。結果を出すための準備を常にしてきたからこそ、チャンスを掴むことができたと思っています。